通知表の役割は

小中校で通知表廃止 年4、5回評価 埼玉県熊谷市教委

 この取り組みは、通知表を廃止することで、通知表の本来の機能を強化したということに注目したい。
 通知表の本来の機能は、子どもや親に教師が評価したことをフィードバックすることだ。しかし、通知表は本来の機能から懸け離れてしまっている。通知表は、子どもたちに優劣をつけるための道具となり、評価の観点などは、子どもや保護者には何を評価するものなのか分からない言葉で示されている。そういう通知表ならば年に何回もらっても子どもや親にとっては意味がない。だから廃止しても構わない。
田中耕治編著 『新しい教育評価の理論と方法〈第1巻〉理論編―新しい教育評価への挑戦』からの引用。

 教育評価のプロセスにおいて、「フィードバック」の意義を強調したのは、ブルーム学派である。たとえばその最近の成果であるガスキー(Guskey,T.R.)によれば、フィードバックを行うとは「うまく学んだことや学習時間をもっと必要とするものを生徒が確定することを援助することである」と述べている。一方ウィギンスも「フィードバック」は単にほめることではなく(それだけではパフォーマンスの改善にならないので)、「意図したことに照らしてどうだったか」という事実を伝えることであると定義している。

 フィードバックをするためには、通知表を見ればその子どもの学力・学びの状況が誰にでも分かるようにすることが必要になる。また、そのためには適切な評価が行われなければならない。ここで言う適切な評価というのは、適切な方法で適宜行われる評価のことだ。そして、最も重要なことは、フィードバックの後で適切な対策が講じられるということだ。これらは一連のプロセスであり、それは繰り返されていくものだ。現在のように、通知表を渡した時点で終わりというのは、評価を行っているのではなく、フィードバックを行っているのでもない。単に教師が子どもを値踏みしているだけ。
 二学期制か三学期制かに関係なく、通知表の本来の役割を確認し、その役割が果たせるように変えていくことが求められている。