まだいる全国学力テスト万能主義の人たち

 なぜこれほど「学力テスト」について無理解なのだろうか。静岡県知事が「責任の所在を明確化するため」として成績上位校の校長名を公表するという話。学力テストの成績の責任と言うけれど、そもそも、その学力テストは何を評価するためのものだろうか。子どもの学力?教師の力量?全国学力テストはあらゆるものを評価できる万能のものだと考えられているようだ。しかし、それは間違いであり、妄想であり、勘違いだ。
 全国学力テストは、国が行っている。それは、国が教育施策を策定し、それを実行し、それを評価するためだ。国が教育に責任を持つ。そのためには評価をし、教育施策を見直し、実行し、評価をしていく必要がある。そのために設計された学力テストだ。
 学力テスト万能主義の人たちに考えてもらいたいのは、学力テストはある目的のために設計される。そのために限定したものだけしか評価できないということだ。表面的には様々なものを評価できるように見えるかもしれない。しかし、それはそう見えるだけであり、目的外のためにそのテスト結果を利用することは間違っている。
 PISAを例にして考えてみるといい。PISAの調査で、全国学力テストのように教師の力量を評価できると考えるだろうか。おそらくそうは考えない人が多いだろう。なぜか?抽出調査だからという人もいるかもしれないし、PISAはそういうものを評価するものではないと思い込んでいるからかもしれない。全国学力テストは全数調査だ。だからPISAでは評価できないものを評価できるという考え方がある。けれど、全数調査は共通の問題を使い、共通の質問を行う。それは調査範囲の限界があることを示す。つまり、全国学力テストはPISAより評価できるものが限られている。万能ではないということだ。
 静岡県知事のやっていることはテストの目的外使用であり、責任の所在を間違って明確化しようとしている。全国学力テスト万能主義を早く捨てるべきだ。