子どものコップ
- 作者: 大村はま
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2004/06/01
- メディア: 新書
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子どもがコップを持って、自分の身体を養う物を飲むとします。教師はそのコップに栄養のあるいい飲み物を入れるんですが、入れると教師は満足して、もっともっと入れようとするんです。でもそれは、子どもが飲み終えて、もっとほしいと思ったころに入れるのがこつ。飲んでいないところへ入れても、こぼすだけです。
なのに、「入れた」という自己満足が教師をたぶらかします。あれだけ入れたから身についたと思うでしょうが、子どもが飲み終えていなければ、こぼすだけです。
私は折にふれて、「子どものコップは小さいから」と思うことがありました。飲んだところを見計らって、それから次のものを入れようとしておりました。なかなか飲まない人もいますし、早く飲む人もいます。
とにかく、飲んでいないコップにまた入れる、というのは、愚かなことだと思います。
子どものコップには、まだ注ぐ余裕がある、子どものコップは可塑性があるから少々無理しても大丈夫。子どものコップとコップに入れられたものの量を勝手にそう思い込んで、子どもが飲みきれないでいるのに注げと言っている。
子どものコップに注ぎ足りないんじゃないかという不安。子どものコップにはいくらでも注げるんだという幻想。子どもは飲めなければこぼすだけ。子どものコップは小さい。それを忘れて愚かなことを繰り返している。