相互不信と相互批判に陥らせないこと

いじめ急増 メール脅迫や「裏サイト」まで…(11月16日付・読売社説)

社説:いじめ調査 数字の山から教訓を引き出せ

【主張】いじめ調査 これで不信感が拭えるか

いじめ調査―いかに痛みを教えるか 朝日新聞

 産経新聞の社説では,

学校や教育委員会文科省の隠蔽(いんぺい)体質やことなかれ主義が変わらなければ、この数字も信じられない。

と主張している。例えば広田照幸氏の

「凶悪犯罪は低年齢化」していない
?子どもに対してせっかちな大人たち

という主張にも数字の信頼性などに問題はないかということが指摘されたりする。行政が出してくる調査結果についてそれが信頼できるかどうかを議論することはいいことだと思う。それならば,調査の精度を高めるためにはどうするかを議論すべきであり,調査結果は信じられないとするだけの主張では問題の解決につながらない。
 また,なぜ「隠蔽体質やことなかれ主義」に陥るのかということも考えなければ問題は解決しない。その解決のためには様々な議論が必要になる。けれども,マスコミの報道姿勢は,その体質を批判するだけにとどまっている。
 これまでのマスコミの報道姿勢は相互不信と相互批判を招くのに大いに貢献してきた。
 例えば,広田氏が繰り返し提起しているのは,教育に対してただ批判するだけ,ただ不信感を募らせるだけの現状を批判し,問題の本質はこうではないかと提起することだ。こうしたものが一部でも存在していることはいいことだと思う。
 マスコミの報道姿勢は,問題の本質に迫るようなものではない。一方的にターゲットを批判し,批判された側に一方的に大きなダメージを与えたり,短絡的な解決策を示してみせることで自分たちは責任を果たしたような気分になっている。その結果,問題の本質を罵詈雑言と構図の単純化によって覆い隠すことになっている。
 いじめの問題は,解決すべき重要な問題だと思う。そのためには,扇情的な主張よりも,短絡的な解決策よりも,複雑な要因を一つ一つ取り除いていく地道な活動,相互理解と相互の信頼とを構築するための地道な活動,そういうものにエネルギーを費やした方が良いのではないか。
 相互批判と相互不信だけが深まっていく現状をどうやって変えるか。マスコミはそういうことに貢献をしてほしい。