これが大事。だけどすぐに忘れられてしまうこと。

学力テスト簡単すぎ? 学力低下計れぬと専門家

 この記事のなかに重要な指摘がいくつも載せられている。けれども、すぐに忘れられて、いつの間にか得点の高低の話になり、学力テストの意味合いは薄れてしまう。

 桜美林大の芳沢光雄教授は、6年生の問題について「2つの数字の計算が多い。子供が弱いのは3つの数字による四則混合計算なので、これではあまり意味をもたないのではないか」と指摘する。大量採点のため「中3の証明問題も穴埋めだし、センター試験のような5択問題が多いのはいかがなものか」と疑問を呈する。
 埼玉県内の数学教師は「算数・数学Aはやさしい問題。これでは学力低下は計れないし、得点の二極分化は表れないだろう」と話す。
 文科省でも「Aは平均が高くなるだろう」とみており、一部に43年前の問題はあるが、データの比較は難しいと漏らす。

 いくら急ごしらえの問題だとしても、これまで指摘されてきた問題についてきちんとしたデータが得られないのなら、学力テストの意味はない。また、文科省の「一部に43年前の問題はあるが、データの比較は難しいと漏らす。」という部分には目が点になった。そんなのはやる前から分かっていたことだし、学力観などが変化している中で43年前と比較することであまり参考になるようなものは得られない。比較して、得点が下がりましたというために行うとしたら必要なことかもしれないが。

 東大の市川伸一教授(教育心理学)は、行政がデータを取るだけなら抽出調査で十分だとして、全員を対象としたテストには否定的な姿勢を示してきた。
 だが、今回の結果をフィードバックさせ子供の学習改善に役立てようという目的については評価する。
 市川教授は、学力テストのデータを利用しての学力改善策として、(1)要因分析(2)新しい指導法の検証−を提案する。
 (1)は学校や教育委員会で、独自に子供の生活や学習実態をより細かく調査して、成績が良かったり、学力向上の理由を具体的に知る(2)は自校などで新たな指導法を試み、効果があったかを検証する−べきだという。
 「効果的な使い方ができれば進んでテストを受けるようになるのではないか」と市川教授。
 芳沢教授は「Bでは理科と数学を融合させた問題や、よく読んで状況把握しないと答えられない文章題など、算数や数学の垣根を越えた良い問題がある。こういう問題が解けるように、学校で指導していけば学力向上に役立つ」としている。

 市川氏の指摘していることは至極当然のこと。しかし、それがこれまでできなかったというのが本当の問題。市川氏が指摘しているようなことがきちんと行われるために必要なことは何か。というようなことが事前に議論されていない。おそらく、これから多くの人の関心は得点の高低に向かう。そうした中で、市川氏が指摘したようなことがきちんと行えるような雰囲気は生まれない。だからこそ、事前にきちんと考えておくべきだった。