教員の管理と監視の強化をもくろむ人たち

中山元文科相、視学官の権限強化を 教委や学校抜き打ち調査も

 政府が今国会に提出する教育改革関連3法案の焦点となっている教育委員会への国の関与強化について、自民党教育再生特命委員長の中山成彬文部科学相は4日、熊本県阿蘇村で開かれた教育再生民間タウンミーティングにパネリストとして出席し、文部科学省の視学官の権限を強化すべきだとの見解を示した。
 教育委員会への国の関与強化では、地方教育行政法改正案に「教委への是正勧告・指示権」が盛り込まれる方向だが、中山氏は具体策として「視学官にもっと機能を持たせ、教委や学校を抜き打ち調査できるようにすべきだ」と述べた。

 視学官が、困難な問題を抱える学校に対して、外部から助言や指導を行うという本来の仕事をやるなら、中山氏の言う抜き打ち調査など必要ない。中山氏は、視学官を教委や教員の監視・管理のために利用したいだけ。
 日本にもイギリスのようなOFSTED (教育水準査察院)を設置すべきという意見があるが、それも困難な問題を抱えた学校などを支援する目的ではなく、教委や教員の監視と管理を行うために必要だといわれているだけ。
 視学官はもともとイギリスの勅任視学官がモデルになったし、OFSTEDもイギリスがモデルだ。しかし、日本ではそれを教委や教員の監視と管理を担う機関として導入せよといわれている。これは本末転倒した主張だ。
 困難な問題を抱えた学校や教員を支援するシステムを構築すべきはずなのに、それを教員の資質の向上にのみ追わせようとする最近の動向は間違っている。
 教委や教員の監視と管理を強化したところで、問題は解決はしない。単に自分たちの言いなりになる人間を増やしたいために、国などの権限強化を安易に主張する。そんな馬鹿げたことを放置してはいけない。