犬山市教委の判断は尊重されるべき

国学力テスト:私立の4割が不参加 一部公立も

愛知・犬山市が学力テスト不参加

全国学力調査、公立は犬山市を除き参加 私立は約6割

4月の全国学力テスト、私立参加6割にとどまる

 おそらく、この報道によって犬山市教委に全国学力テストへの参加を求める声や圧力が高まるだろう。しかし、それはおかしいことだ。
 全国学力テストには参加義務がない。教育委員会が、必要がないと判断したなら、それは最大限尊重されるべきだ。安易に参加を促したり、参加を強制するようなことはすべきではない。
 毎日新聞の記事には、

 文科省は全国一律の調査が不可能な状況について、「できるだけ多くの人に参加してもらったほうが正確な数字が出てくる。ただ、(テストの)中心は公立学校だと考えている」と話している。

という文場科学省の意見があるが、文部科学省の言う「正確な数字」とは一体何か。また、なぜ正確な数字が必要なのか。私には全く理解できない。文部科学省が正確な数字を把握したところで、子どもの子別な問題にどれだけ対処できるというのか。あまりにも馬鹿げた考え方だ。
 また、産経新聞の記事には、

 全国学力テストは4月24日、学校教育の現状や課題を把握するため43年ぶりに実施される。小6と中3が対象で、試験科目は国語と算数・数学。生活習慣や学習環境も同時に調べるため、「早寝早起きの子供は成績が良い」といった生活習慣と学力の関係の分析なども可能になる。

などという解説がされている。「「早寝早起きの子供は成績が良い」といった生活習慣と学力の関係の分析」したければ従来の地域ごとの学力テストで十分ではないか。また、そういうものが分かったとして、それがどれほどの意味を持つというのか。このようなことが書けるのは、学力テストの意味を全く理解していないからだ。
 http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20070210/1171089401で書いたことをもう一度繰り返し書いておく。
 犬山市はこれまで独自の教育目標を掲げ、様々な施策を実施し、実績を上げてきている。それをわざわざ全国学力テストに組み込まれる必要は無い。
 犬山市教委は、これまで実施してきた施策の実績と、その施策を実施するのに、全国規模の学力テストは必要が無いこと。そのことを保護者にも住民にも丁寧に説明することが必要だ。そういう過程も無く、全国学力テストへ参加することを決めてはいけない。
 犬山市のように独自の改革を行っていて、全国学力テストに参加しないという判断を行っているのは、そう多くはない。少数派だ。そういうところが、「全国学力テスト・学習状況調査は、自治体間や学校間を競争させるものでなく、児童生徒の全国的な学習到達度・理解度の把握を検証し、教育指導の改善や教育環境の充実を図るもの」という理由で、独自の改革を止めたり、できなくなる可能性を高めるのは間違っている。
 全国学力テストなるものが、なんとなく魅力的に見えるのかもしれない。しかし、独自の理念を持ち、改革を行っている自治体にとっては参加するメリットは無い。
 また、全国学力テストには参加しなければいけない、というある種の強迫観念というか、思い込みが強くある。しかし、全国学力テストという大規模な調査が必要なのは、国が教育施策を見直すために必要なのであり、それならば、従来のサンプル調査で事足りる。
 地域ごとに子どもの課題を見つけ、対策を行うのであれば、その地域ごとの学力テストで十分だ。そういうことを犬山市教委はきちんと説明してほしい。
 これまでも何度か書いてきたことだが、学力テストが子ども、教員、行政にとってそれぞれ異なる意味を持つということ。それは、同じテストによってカバーする必要が無いこと。何より、大規模になり実施時期や内容などが必要に応じて選択できないような柔軟性の無いものより、必要なときに、必要な内容で実施できる小規模の柔軟性のある学力テストのほうが子どもや教員にとっては重要なことだ。
 最後にもう一度、書いておく。犬山市は全国学力テストに参加する必要は無い。市教委は、丁寧な説明と、議論をきちんと行ってほしい。そして、他の自治体でも自分たちは本当に全国学力テストが必要なのか、きちんと議論をしてほしい。国がやるから参加するとか、反対すると批判されそうだからとか、そういう馬鹿げた考えを捨てるべきだ。[asin:418223510X:detail]