教育基本法改正で変わったもの
「襟を正して信頼回復を」 教育長会議で文科次官
この記事の中で注目すべきは、
改正教育基本法が22日に公布・施行されたことを踏まえ、田中壮一郎生涯学習政策局長は、教育行政に関する「不当な支配」条項に言及。「『不当な支配』に対しては、毅然(きぜん)とした態度で対処していただきたい」と要請した。
という発言だ。記事では、この発言について何も書いていないが、田中(壮一郎)氏の発言は、教育基本法改正によって何が変わったのかをよく示している。
田中氏がここで言う「不当な支配」は、田中氏の真意は明らかではないが、教職員組合などの「不当な支配」に対しては毅然とした態度で対処してほしいという意味であると推測できる。これは、改正前の教育基本法までの「不当な支配」の解釈とは全く異なることを意味する。
これまで、改正前の教育基本法第十条が改正されることについて、何度も問題であるということを主張してきた。それは、「不当な支配」の解釈が田中氏の発言のように大きく変化することを危惧したからだ。
「不当な支配」の意味が変わることで、一番大きい悪影響は、教育行政の暴走を止める手段を失なうということだ。これまでは、教育行政も不当な支配をする側であって、それが暴走するのを改正前の教育基本法第十条は止める役割を担っていた。それが改正によって失われた。
記事にある田中(壮一郎)氏のいう「不当な支配」の解釈は、http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20060517/1147795341で引用した田中耕太郎氏の「不当な支配」の解釈とは全く異なる。
http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20060617/1150482116で引用したなかで、森戸辰男氏が
日本の過去、殊に戰時中あるいは戰爭直前における日本の教育行政のあり方におきましては、一方では文部官僚、他方では軍部、内務官僚等の形で、地方の教育が不当な支配を受けたという事実は、否定することができないのであります。終戰後の教育刷新の時代におきましては、軍部はなくなりましたし、いわゆる内務官僚というものも、すでに昔の形ではなくなつたのでありまして、こういう不当な支配が行われる仕組というものは、きわめて少くなつたと解すべきであります。そして私ども文部当局にあります者も、不当な支配を及ぼそうという考えは毛頭ありませんし、そういうことはあり得べきはずはないと考えておるのであります。しかしながら、他面將來そういうような危險が全然ないということも確言できませんので、政府といたしましては、そういうことのないようにということが、この意図であるのであります。
と述べている。森戸氏の言う将来の危険が今回の教育基本法改正だった。田中壮一郎氏の発言は、そのことを改めて感じさせた。こういう変化に対しては敏感に反応し、批判していかなければならない。