教育基本法改正案の問題点

http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20061028/1161995465で紹介した、仲正昌樹現代社会における「公共圏」」より引用。

 人間の思想・信条は、アプリオリに与えられるものでも、公的な領域において瞬時に“選択”されるものでもなく、一定の年月をかけて、様々な社会的・文化的な文脈が織り込まれている私的領域の中で形成されてくるものである。

 与党、民主党両党が提出している教育基本法改正案の問題点は、私的領域で形成されるはずの人間の思想・信条を法律という公的な領域において瞬時に“選択”させることにある。

 近代法は、少なくとも建て前上は、後者、つまり公的領域における「法=権利主体」の活動として「現象」している部分だけを規制し、それ“以前”の部分は放置していた。そうした建て前が崩れて、「法」が済し崩し的に「私的領域」に入ってきて、人々の振る舞いを「内」側からもコントロールするようにすれば、「自由」はその“実質”を失うことになりかねない。

と仲正氏が指摘するように、教育基本法改正案では「「法」が済し崩し的に「私的領域」に入ってきて、人々の振る舞いを「内」側からもコントロールする」ことになり、「人々が自らの生き方に適した“価値観”を自由に育める余地が縮小していく」ことになる。
 つまり、

 法的な「規範 norm」によって、各主体(subject)の生き方における「正常性 normality」が産出され、主体がそれに無自覚的に従う(be subject to)ようになる

ということだ。