教育基本法第十条は形骸化している

 こういう記事やそれにつけられているコメントを読むと、憲法の話に飛躍する以前に教育基本法第十条についてどう考えているの?と聞きたくなる。
 教員の服務規程違反がこの問題の中心であるならば、「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」と「教育公務員特例法の一部を改正する法律」のいわゆる教育二法の問題と関わってくる。さらには、教育基本法第十条の問題とも関わってくる。しかし、そういう問題がきちんと整理されないまま、憲法の問題へと飛躍してしまう。
 こういう問題が憲法の問題として、それだけで議論されてしまうと、教育基本法第十条の本来の役割は忘れ去られ、都合よく解釈され、教育行政を縛るものは何もなく、教育行政以外のものを一方的に縛るものへと変えてしまっている。
 少ない知識だけで言えば、「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」と「教育公務員特例法の一部を改正する法律」と教育基本法第十条との整合性があるのかということに疑問を持つ。また、教育基本法第十条は教育行政を制限する役割を持っているのであり、教育行政に反対するものを取り締まる役目を持つものではない。また、教育行政に「法律に基づく」という前提さえあれば何をしても良いという御墨付きを与えるものではない。
 憲法の問題へとすぐに飛躍してしまうのではなく、きちんとその前にある問題について裁判でも争うべきではないか。教育基本法第十条はそういう状況の中で、きちんと取りあげられて議論することもなく形骸化してきたのだと思う。