現場にいてこそ意味がある

「実務家」教員の在り方に関して

 岩田康之氏が提出した資料の中で実務家教員に望まれる資質として次のようなものを挙げている。

  • 「知識や事例の豊富さ」<コーディネーターとしての力量→ 実践経験を持つ院生たちの「事例」の相互交流・構造化のコーディネート(上から「伝える」姿勢よりは「ともに学ぶ」 pier review的視点を持つ人)
  • 「理論と実践の架橋」の体現→ how toの蓄積 skillの熟達だけではない、研究的省察のリーダー
  • 教職大学院」の教育方法への精通・習熟→ 従来型の「講義」「演習」ではなく双方向型・参加型の授業運営

 このような資質を備えた教員を大学院で育成し、現場でそういう人たちが核になって研究や研修をやってもらうというのが本当は必要なのではないだろうか。そういう資質を備えた教員が増えていけば、どの学校にも核となる教員がいることになる。そうすることでどの学校でも教員の資質を向上させる取り組みが可能になる。また、そういう資質を備えた教員が増えることで、ピラミッド型の権力構造ができにくくなる。
 教員の資質を向上させたいと思うなら、何も専門職大学院など新たに設置する必要はない。日常的に資質を向上させるための取り組みができる体制を作ればいい。どうしても現場から離れてじっくりと取り組まなければならない場合は大学院で研究をしてもらえばいい。
 大学でいろいろな教養を身に付け、現場に出てそれが実践と結びつき教員は成長する。団塊世代の大量退職が控えているからといって、全て即席の実践力を備えた教員というのが重宝がられ、そういう教員を育成するべきだと言われている。しかし、大学を卒業しただけで即戦力を備えて現場に入る教員などいない。即戦力もまた現場で育成されているからだ。しかし、現場で教員が育つということが忘れられているようだ。だから、現場で日常的に教員の資質を向上させるような制度はほとんど提起されていないし、整備されていない。
 天下り先になりそうなものを作るよりも、現場で教員が成長できる仕組みを作っていくべきではないだろうか。