ゆとり教育の弊害

ゆとり教育1期生の知識不足カバー 県内大学、補習実施

 「ゆとり教育」を掲げて三年前に導入された新学習指導要領で学んだ高校生が今春、大学に進学し、大学側は「二〇〇六年問題」と頭を悩ませている。教わる内容が旧指導要領より大幅に削減された科目があり、これまでの指導法では授業についていけない学生がいるため。理系の学生の事態は深刻で、徳島県内でも入学後、高校の学習内容を補習する大学が出ている。
 新学習指導要領では学習内容が三割程度削減され、数学では工学部に必修とされる積分方程式を教えず、生物でも光合成の化学反応式を教えないなど内容が基礎にとどまっている。理科は他大学と併願受験しやすいように専攻と異なる科目での受験が増えていて、専攻に必要な基礎知識を入学後に学び始める学生も少なくない。

 いわゆる「ゆとり教育」によって教える内容は確かに削減されたし、その弊害はたくさんある。しかし、高校の学びが大学における学びを見越してそのための学びが行われているかと言えばそうはなっていない。今の高校は前にも増して予備校・塾化している。
 大学側にも問題がある。専攻で最低限必要な知識が何かぐらい大学側はきちんと分かっているはず。それを専攻とは異なる教科で受験を認め、合格させている。高校は入試にしか照準を合わせないのだから、受験に必要のないものは学ばせないし、学ぼうとしない。大学はそれでも入学を認めた以上コストがかかっても学び直しをさせるのは当たり前のこと。

「大学で物理が必要だが、高校で履修しなかったので補習で助かっている」と頻繁に自習室に通う。

と学生が述べているが、こういうのは「ゆとり教育」の弊害ではなく、高校と大学との接続の問題で、そこをきちんと改善しなければいけないこと。大学はこれまで定員を確保するような面には地道な努力をしてきたが、これまで置き去りにしてきた問題がある。それがこの問題だ。また、高校は「特色」として大学の進学率を上げることに躍起になっているが、そういうことがこの問題をより深刻にしている。
 この問題は、長く放置されてきた結果、今になってあわてて対処しているだけ。「ゆとり教育」には様々な問題があるかもしれないが、この問題を表に引きずり出してくれた。いわゆる「二〇〇六年問題」は、これまで放置してきたツケを払い始める年になるよということ。そのツケは、これまで放置してきた人たちが払わなければならない。