こんな提言要らない

教育改革案:学力テスト全学年実施を提言 自民党

 自民党の文部科学部会と文教制度調査会が次のようなことを提言として文部科学大臣に提出するそうだ。

 改革案は、教育の質を保証するため、国の責任による評価システムの構築が必要と強調。文部科学省が07年度から全国の小学6年生と中学3年生を対象に国語と算数・数学計2教科の実施を目指している全国学力テストについて、小学校で4教科(国算理社)、中学校で英語を入れた5教科を全学年で実施するよう提言した。
 このほか、全学校に対し教育内容の自己評価の実施と結果の公表、保護者や地域住民による外部評価の導入をそれぞれ義務化するよう求めた。
 優れた教員には昇給やボーナス増額で報い、指導力不足教員には給与減額などで厳格に対応。教職員の人事権を都道府県教委から市町村教委へ段階的に移譲するなど、教育現場の裁量拡大策も盛り込んだ。

 まずは、全国学力テストを全国の学校、全教科、全学年で実施という提言。この学力テストの実施には莫大な予算と時間と労力が必要となる。その確保ができるだろうか。誰が考えても無理ではないか。また、国がそこまでやる必要があるのか。国はそこまでやる必要は一切ない。そういうことに注がれる予算と時間と労力を他の有意義なことに回すのが当たり前であり、国が責任を持つというのであれば、全国全ての学校で、必要な時に必要な調査が実施され、その結果を受けて必要な対応が講じられるような予算と時間と労力を確保することに全力を挙げるべきだ。国ではなく各学校でこういう取り組みはやるべき。
 次に、全学校に対し教育内容の自己評価の実施と結果の公表、保護者や地域住民による外部評価の導入をそれぞれ義務化するよう求めた提言。評価は必要なことであり、それ自体は否定しない。しかし、そういう評価がきちんと機能するための環境作りは全く進んでいない。アメリカをモデルと考えているならば、まずはアメリカ並に分権化を推進するべき。そうでなければ、評価は機能しない。
 優れた教員には昇給やボーナス増額で報い、指導力不足教員には給与減額などで厳格に対応するという提言。指導力不足教員の給与を減額するということは、指導力不足教員への懲戒的な面が含まれている。しかし、指導力不足教員は教員個人の問題だけで生まれるのではない。指導力不足教員の問題を、教員の怠惰が主な要因であると短絡的な捉え方をしているのだとしたら、それは間違いだ。教員個人の問題ではないものをこのように扱うのは間違っている。
 教職員の人事権を都道府県教委から市町村教委へ段階的に移譲するなど、教育現場の裁量拡大という提言について。ますやるべきは、そういう分権化とは全く逆の方向を向いている教育基本法改正案を廃案にすべき。また、教育への不当な支配(教育行政も例外ではない)を排除する仕組みをきちんと構築すべき。
 実施できる可能性も低く、十分な効果が得られるかどうかも分からないような内容であり、中教審などでも既に検討され提言されている内容ばかりだ。もう少しきちんと検討して、現実的なものを提言すべきではないか。