グローバル戦略

 経済財政諮問会議が策定している「グローバル戦略」で主に教育に関するものは、

1.人材の国際競争力の強化
①人材の質の向上
 将来の労働市場を担う国際的に通用する人材を質・量ともに確保する。このため、2010年までに国際学力調査における世界トップレベルの達成を目指す。

  • 理数教育・ICT教育の充実、全ての基本となる国語力の増進、小学校の英語教育の充実に向けた条件整備
  • 学習指導要領の改訂等による教育内容の充実、学校に関する外部評価とその結果の情報提供の推進、コミュニティ・スクールの設置促進、地域の実情に応じた学校選択制等による教育の質の向上

 すべての人に多様な機会が与えられ、仮に失敗しても何度でも再チャレンジができる社会を実現するために、内閣官房長官の下に設置された「再チャレンジ推進会議」において、各府省における具体的な取組についてとりまとめを行う。

 人口減少下で、経済社会の活力維持を図るため、労働生産性及び就業率の向上を図る。

  • 現場を支える人材の労働生産性の向上のための能力開発機会の拡充
  • 就業形態間での行き来の可能性や均衡処遇の促進
  • 就業形態間での行き来の可能性や均衡処遇の促進
  • 仕事と生活のバランスのとれた働き方の推進

 2007年度に向け、将来の経済活動を担う人材の自立を支援するための新たなプランを作成する。

  • 具体的な目標も念頭に置いた若者支援策の充実(例えば、2010年までにフリーターを約2割減少させる)
  • 学校、家庭、地域、企業の連携による勤労観・職業観の養成等人間力の向上(例えば、中学校を中心に行う5日間以上の職場体験(キャリア・スタート・ウィーク)や長期宿泊体験活動などの体験活動等の充実)

 専門分野や国際社会で求められる英語力、プレゼンテーション能力、企画・マネジメント能力を身に付け、国際的に活躍できる人材を養成する。また、国立大学の法人化等を契機として、競争的環境の下、各大学が一層個性を豊かにして、国際的に魅力をもつとともに知の拠点として地域に貢献する大学の構築を推進する。

  • 専門職大学院における法務、会計等専門分野の人材の養成機能を強化
  • 教育プログラムの開発等大学院教育の抜本的強化や産学共同による高度な人材の養成(企業実習、長期インターンシップ等)を推進
  • マネジメント機能を強化しつつ、産業界や国際的なニーズに対応した機動的な学部・学科の創設・再編を推進
  • 各大学の蓄積・能力の結集による教育研究機能の相互補完・強化を図るための大学間連携・複数分野での学位取得を可能とするコース設定を一層推進
  • 教育研究のための資金の確保と産業のニーズも踏まえた第三者評価に基づく重点投資の促進
  • 国際社会で活躍する人材等に求められる英語力を身につけさせることを目指す(例えば、TOEICについて、英語で仕事上のコミュニケーションができる700点程度以上の者の倍増)。

となっている。
 「2010年までに国際学力調査における世界トップレベルの達成を目指す。」という目標が掲げられているが、「国際学力調査における世界トップレベルの達成」によってなぜ「国際的に通用する人材を質・量ともに確保する」ことになるのだろうか。
 国際学力調査で上位に入っていない国々でも、国際的に通用する人材はいくらでも排出している。このような目標を掲げたとしても、それが前提とする「国際的に通用する人材」の具体像は見えてこない。他にもいろいろと指摘したいことがある。
 このようにグローバル化を強く意識し、そのための戦略を立てようとする一方で、他文化の排除につながるようなもの(教育基本法の改正案もその一つ)、外国籍の子どもたちへの同化主義的教育などに対する批判はしない。
 彼らの言う「グローバル化」は主に経済分野など狭い分野におけるグローバル化であり、彼らは教育などにおけるグローバル化についてはあまり関心を寄せていないし、理解も十分ではないように見える。