教育基本法第十条について

 教育基本法第十条について田中耕太郎「教育基本法の理論」から引用をしたい。長くなるので数回に分けたい。

 わが国における教育は過去において中央と地方の官僚の支配に服し、また政党や地方のボスの勢力に影響されないとはかぎらなかった。第十条第一項前段の趣旨は教育権の独立を宣明するにある。
 ここにいう「教育」には、すべての種類の教育すなわち学校教育、社会教育、家庭教育等をふくむが、しかし、本条の意義は国および地方公共団体が設立するところの学校およびこれと同じく公の性質をもつ家庭教育、私立学校における教育ならびに、国および地方公共団体が奨励する社会教育に関して存する。しかし「教育」には教育自体のみでなく、教育行政も包含するものと見なければならない。教育行政のあり方は教育の内容や方針に影響を及ぼすことが大であり、従って教育行政の独立を保障することは教育自体にとってきわめて重大な意義を有する。例えば教員の地位が官僚や政党人の意向によって左右できるとするならば、良心的な教育を施すことは期待できないのである。本条に「教育行政」という表題がつけられている以上、重点は教育行政におかれているものと見るべきである。