こういうふうに育てたい

俺の考え (新潮文庫)

俺の考え (新潮文庫)

 この中で本田宗一郎氏は次のように述べている。

 現在の偉人というのは一人のものじゃない。私たちが一つのエンジンの性能を上げるといったって、音響学、エレクトロニクス、化学、金属学、機械学、あらゆる分野が全部寄り集まっていろいろなことをやらないと上がっていかない。
 現代の偉人は大衆の偉人であるべきだ。昔のように人の犠牲によってなり立った偉人は断固として排撃すべきである。ナポレオンしかり。豊臣秀吉しかり。人の犠牲によってなり立っている偉人を崇拝するという思想は非常にこわい。
 それは会社経営においてもこわいと思う。一人一人の思想が違うように、それぞれ持味、得意が違うのだから、その得意をみんな出し合って一つの法人という偉人をつくりたい。書類を届け出ればすぐ法人だというけれども、法人というものは円満な人確を持った人をいうと思う。そうするには一人一人はあまりにも欠陥が多い。ぬきんでている人ほど欠陥が多い。人間はプラスマイナスすれば大体同じようなものだ。
 しかしやはりぬきんでているものをみんなして大事に育て上げ、そしてマイナスのものをみんなしてとり去って共同生活していくところに、法人としての円満なる人格ができ、世間から評価される会社ができる。
 こういうふうな一人でない偉人、みんなして大勢の偉人、もっとひろげるなら日本人としての大きな偉人を私はつくりたい。紙くずがあるなら拾ってやるとか、おばあさんが車道を横断できなければ手をひっぱってやるとか、心あたたまるような行為、これも偉人だと思う。昔のように「青年よ、大志を抱け」というように漠然としたことで教えるべきじゃない。偉人というものは自分の周辺にいくらもあるものだ、ということをわれわれが悟らなければならない。それが会社を発展させる基本であると思う。

 こういう教育ができればいいなとこの本を読む度に思う。