文章題の問題点について

そらさんから

例えば文章題の中身を「日常的な場面や表現」にするだけでは、同じことなのでしょうか?
日常と数学を結びつけるためにできること、子どもが自らパターン化していくことを促すものとは、どんなことなのでしょうか?

というコメントをいただいたので少し書いておきたい。
 文章題の中身を「日常的な場面や表現」にするだけでは先日から指摘している問題は解決できない。例えば、

  • 100円の飲み物と95円のお菓子を買いたい。お金はいくら必要ですか(消費税は既に価格に含まれている)?

という問題を算数の時間にだしたとする。子どもたちは195円と解答するだろう。しかし、実際に買い物をしているときは、およそ200円という答えでも正解となる。日常的な場面を文章題にしても、その場面がどのような文脈の中にあるかで最終的な結論は異なる。その違いはどちら一方が間違いということではない。どちらも正解だ。しかし、既にパターン化されたものを単に記憶し、文脈に注意を払うこともなく記憶した型に当てはめて解答すると、先程の文章題の解答は195円以外にないと考えられてしまう。
 日常的な生活・仕事の場面では様々な状況に応じて許容される解答は異なるし、解答を導くまでの道筋も異なる。しかし、ある解答だけが正解とされてしまう。子どもたちが足すということの意味を考えて解いているのに、正解と不正解とに分けられる。
 また、授業で先程の文章題の答えとしてある子どもが200円というのを出したとき、教師はそれについてどう評価するだろうか。200円と解答した子どもの考えを聞いたあとで、195円に訂正できるだろうか。
 例えば、低学年では「具体物を使って」ということがよく言われる。リンゴを示してリンゴを4等分するという問題をだす。リンゴはそこで役割を終えて子どもの目の前から消える。そうではなく、リンゴを子どもに渡して子どもが切り分けたりしながら考えることが重要だ。文章題もこれと同じで、子どもが自分で操作することを許容するものであれば子どもは考える。数学では子どもが自分で試行錯誤する機会を設けることが重要だ。それが子どもの思考を幅のあるものにする。
 また、日常の様々な場面の中で数学で学ぶことがどのように活用されているかを意識させることも重要だ。それは、実際に体験しながらでも良いし、観察しながらでも良いし、話を聞いてでも良い。どこで数学がどのように活用されているのかを子どもに見つけさせる。その時に現実の物事を抽象化する場面と抽象化したものを現実に適用する場面の両方を子どもに経験させるべきだ。そして、子どもには常に「なぜこうなるの?」ということを問いかけること。そうすることで公式や定理の意味について考えるようになる。
 数学を教室内だけの学びにしてほしくない。子どもに数学の面白さや有用性をきちんと伝えて欲しい。