PISAから学べない人たち

国学力テスト、全員参加復活へ 文科省案「数年に1度」

 「全員参加」方式から「サンプル抽出」方式に改められた「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)について、文部科学省は17日、全員参加方式を数年に1度、復活させる案をまとめた。省内に設置した専門家会議の意見を受け、「子供たちの学力を正確に把握するには、抽出調査だけではなくきめ細かい調査が必要」と判断した。18日の同会議に復活案を示す。

 おそらく、文部科学省PISAから何も学んでいないのだろうと思う。その理由は、

抽出方式では、集計結果に数%の誤差が生じるため、文科省では「数年に1度は誤差が生じない全員参加とすることで、調査の精度を上げる必要がある」と判断した。

というところから分かる。PISAの報告書なりをきちんと読めば、抽出調査では誤差が生じること、その誤差を前提として様々な段階を経てデータを収集していること、そのデータを公表する際にもそれを明示すること、誤差が生じるというデメリットがあっても、それ以上のメリットがあるということなどがあってPISAが行われていることが分かる。文部科学省の役人やこの記事を書いた産経新聞記者にはPISAの報告書をぜひじっくりと読んでもらいたい。
 もし、悉皆調査をしなければ「正確な」学力の把握ができないというのであれば、PISAやNAEPの担当者なりにこう言ってみるといい。「あなた方は正確な学力の把握をしていない。それでどうやって教育政策を立案し、実行していくのか。悉皆調査にすべきではないか。」と。おそらく苦笑されるだろう。それは非常識な考え方だからだ。
 抽出調査は誤差が生じる。その誤差を前提として様々な段階を経てデータを収集し、公表するというようなことを文部科学省がどれだけやってきたのか。ほとんどやっていないではないか。そういう事をせずに誤差が生じるからという安易な理由で一部であっても方針を再転換するというのはおかしい。