産経新聞記者は何を取材したのか

事業仕分け 学力テスト大幅縮減、抽出調査に

 産経新聞のこの記事を書いた記者は何を取材して書いたのだろうか。産経新聞が全国学力テストを巡る事業仕分けの詳細を記事にしているので是非読んでもらいたい。
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091126/stt0911260004000-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091126/plc0911260005001-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091126/plc0911260006002-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091126/plc0911260008003-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091126/stt0911260009001-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/091126/stt0911260010002-n1.htm
 これらの記事を読んだ後で最初にリンクしている記事を改めて読んでいただきたい。最初にリンクしている記事では,全国学力テストについて仕分け人がどのような問題点を指摘したのかほとんど分からない。おそらく,すぐに日教組を持ち出してそれだけで批判できると考える人たちにとっては良記事かもしれない。けれども,この記事は全国学力テストについてきちんと議論をするうえでは有害なものというしかない。
 例えば,http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091126/plc0911260005001-n2.htmで,藤原和博氏が

 「これを続けるべきかどうかと話だと思うんですけれども、おそらくこの場の、この会場にいらっしゃる方も、ネットで聞いてらっしゃる方もこの全国学力調査についてはちょっと勘違いをしてらっしゃる可能性があるんです」
 「だまされていると言ってもいいんですが、これですね、問題を公表しちゃっているために経年の比較ができないんですね。ですから平均点の素点が去年より今年、今年より来年、上がっていたとしても、それが日本の子供たちの学力が上がっていることにはならないんです」
 「ここは非常に大事なポイントで、もし経年比較をやりたければ、もっと少ないサンプルで、要するに同じ問題を3年連続で使うということをしなければいけないんです」
 「たとえばOECD経済協力開発機構)のリサーチ、調査、これはフィンランドがずっと2000年、2003年、2006年ナンバーワンで、2009年にまた調査されますけれども、最初の調査は問題を公表しましたよね」
 「ですが、そこからは公表していません。だから経年比較ができるんですね。ここは非常に大事なポイントなんで、みなさんまず、ここは把握していただいた上で、私は、私の意見でいいますと、もしこういうふうにお祭り騒ぎで、全国に学力ってことを話題にしてって言うなら、5年にいっぺんでいいんじゃないのと。あとはサンプル調査で経年比較ができる、そういうシステムのほうがいいんじゃないかと思うんですが、局長にお願いしたいのは、なぜですね、経年比較ができないのに、このサンプル数を4割というような形の、非常に中途半端な形で絞ってですね、60億の30億というような感じ。どうしてこんな中途半端な調査をしようとするんでしょうか」

ということを指摘している。これは,全国学力テストが悉皆調査であるためのデメリットであり,それは実施以前から指摘されていた。けれども,藤原氏が「だまされている」というように全国学力テストは経年比較ができると思いこみ,それが現状の全国学力テスト維持を主張する根拠としても挙げられていたりする。こうした問題点の指摘が最初にリンクしている記事では全く出てこない。出てくるのは,「日教組が後ろにいるよ,怖いよ」というB級ホラー映画の宣伝文句だ。
 きちんと取材したかどうか怪しい,B級ホラー映画の宣伝記事ではなく,全国学力テストを巡る事業仕分けの詳細記事の方を多くの人には読んでもらいたい。