全国学力テスト 自分の位置が知りたい症候群
【主張】全国学力テスト 刺激し合う効果出てきた
全員参加の全国学力テストにはいまだに反対する動きがある。日教組は昭和30年代に学力テスト反対闘争を行い、テスト復活の際には北海道教職員組合の一部が妨害する動きがあった。
民主党は全員参加型を見直し、抽出調査へ縮小する方針という。しかし、抽出調査では参加しない学校などの課題が分からない。全国規模で自身の成績の位置が分かる全員参加の学力テストの教育効果は大きい。
学力テストをめぐっては市町村や学校別の成績公表をためらう教育委員会などが少なくないことも問題だ。今回同時に行われた調査では保護者や地域の人たちに自校の成績を説明している学校は約7割にとどまる。
政府の規制改革会議の調査では学校別成績について保護者の約7割が公表を望んでいる。これに対し、市区教委の約9割は公表すべきでないとし、親との意識の差が大きい。競争や評価を嫌うなれ合い体質の教委の意識改革も必要である。
全国規模の学力調査は何のために行うのだろうか。アメリカのように教育政策の評価という目的であるなら,抽出調査の方が良い。そのほうが調査項目の充実などメリットが大きい。
けれど,日本では違う。とにかく,「全国規模で自身の成績の位置が分かる」ということが目的になっている。「全国規模で自分の位置が分かる。」何のために?と思う。得られる情報量の多さ,多様さから考えれば,民間の模擬試験を利用した方がそういうものを知るためには断然良い。全国学力テストを全国規模の模擬試験と勘違いしてはいけない。
自分の位置を知ることで色々と課題が見えてくるとか,やる気が出るとかいう主張もあると思う。けれど,全国学力テストは自分の位置を知るためとか,やる気を引き出すためではなく,教育政策の評価の手段として行われるべきだ。子ども個人の課題や学校の課題,自治体の課題を調査したければ,クラスや学校,自治体の規模で調査をし,それを積み上げていく方が良い。他と比較がしたければ,いくつかの自治体と共同で,調査項目や調査内容を同じにして調査をしたらいい。その方が小回りが利くし,きめ細やかな調査が可能だ。
全国学力テストが,教育政策の立案に寄与するために,調査項目や比較対象の増加や多様性を目指すのではなく,とにかく「全国規模で自身の成績の位置が分かる」ことが目的でランクに関心が集まる。そろそろ「自分の位置が知りたい症候群」から抜け出して,教育政策の評価のための全国学力テストにしていくべきだ。