全国学力調査について少しだけ

【主張】学力テスト結果 公表し上位の地域に学べ

 まず,

市町村教委は学校や教員が評価されることを恐れず、積極的に学力を公表し、地域の子供たちの学力向上に役立てるべきである。

という主張には同意できない。その理由は,全国学力調査の調査結果のどこを見れば学校や教員を評価できるのか。それが妥当な評価であるのか。それを明らかにしないまま,評価を恐れるなというのは的外れなものだから。
 また,

データを有効に生かし、互いに切磋琢磨(せっさたくま)しなければ全国一斉学力テストを行う意味がない。

旧文部省は昭和41年に全国一斉テストを断念し、数年ごとの抽出調査に切り替えた。だが最近、ゆとり教育による学力低下が深刻化したこともあり、昨年から一斉テストが再開された。

という。しかし,http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20080918/1221676391http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20080918/1221676172でも書いたことだけれども,数年後との抽出調査,各自治体毎の調査などによって全国学力調査で明らかになったと報じられているものの大半は「課題」として提起されてきた。これまでに蓄積されているデータ,その分析結果はいったいどこに行ったのか。
 全国学力調査について提案と問題の指摘をしておきたい。
 まず,全国学力調査の妥当性について評価するための指標や方法の開発,その評価の実施を提案したい。
 また,http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20070509/1178642759などでも書いたけれど,全国学力調査をNAEPやPISAレベルの調査にすること,その上で,悉皆調査というリスクも負担も大きい現行の調査は打ち切ること。
 全国学力調査だけでなく,必要な規模で必要なときに妥当な方法で評価が行われ,それが活用される環境を整備すること。そのために,評価に関する情報の共有,研究の成果の共有,そうしたものをベースとした評価の実施と改善の繰り返し。
 各自治体毎にこれまで行われてきた調査の情報をすべて収集し,検討をし,それを今後の評価や調査に活用すること。そのために,情報を公開すること。
 全国学力調査が学校や教員を評価するものといったイメージで捉えられ,その結果の公表によってイギリスやアメリカの事例と同じようにハイステイクスなテストになりつつある。それは,http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20080913/1221256621にあるような事態を招きかねない。それを回避するために必要な措置の検討とその措置を行うこと。
 全国学力調査を含めた教育政策,教育活動の評価について研究・開発・実施などをおこなう専門機関を創設すること。
 全国学力調査を含めた「評価」においてはフィードバックが重要であることが認識され,それが最優先されるようにすること。
 完璧なものは存在しない。だからこそ変える必要がある。けれども,事前に指摘されている問題を検討し,それを回避することもないまま実施する。それを批判することは間違いだろうか。また,変えるためにはベストではなく,ベターを選択すべき。けれども,それは拙速を容認することと同義ではない。全国学力調査を含めた現行の教育改革には慎重さと合理的な判断が欠けている。