隣の芝生は青い

やばいぞ日本】第4部 忘れてしまったもの(5)

 「隣国同士の同じ関心を持つ若者を集団で見比べることになった結果、次の世代を支える日本人に浸透しつつあった凋落(ちょうらく)傾向が、X線の透過画像のように、はっきりと見えたのです」

 世界中の国が経験してきたように,日本も例外ではなく,経済成長をこれから遂げようとする国は,教育制度が充実し,学ぶ側の意欲も高くなり,外から見れば理想的な教育が実施されているように見える。逆に,教育制度の整備や拡充が行われ一段落し始めると,学ぶ側の意欲は減退し始める。その時,従来の枠組みや目的から脱せずに,新たな枠組みの構築や目的を掲げられなければ,意欲の低下などは止めようがない。日本はそれにことごとく失敗してきた。
 その理由は,

 十分な検証なしで思いつきのようにゆとり教育が進められたことが、考える力を奪い、日本の衰退を招く結果になっている。

と同様に,いわゆる「ゆとり教育」の十分な検証もなく「反ゆとり教育」へと方向転換し,授業時数増,学習内容増などを安易に打ち出す,教育改革の進め方にある。
 日本の教育改革は,十分な検証など経るはずもない。いつもその場しのぎの改革しか行わなかったからだ。それは,その時の雰囲気や空気にもっとも気を遣い。それに合わせることに終始してきたからだ。
 隣の芝生はいつでも青く見える。だからといって,日本の教育の現状の姿を見失い,危機感をやたらと煽るようなことをすべきではない。また,十分な検証もなく進められる教育改革の現状についてまったく批判的な視点も持たず,単なる逆戻りを安易に支持するマスコミ。そうしたことが教育にとって大きな損失をもたらしている。