今やるべきことは

【正論】京都大学経済研究所所長・西村和雄 学力調査は誰のために行うのか

 さて、小中学生の全国学力テストであるが、愛知県犬山市を除く、全国の公立小中学校で実施された。もちろん、学力テストは学力の動向を知るためであって、いくら学力テストをしてもゆとり教育が終わり、指導要領が改善されなければ学力は向上しない。

 全員調査は、それなりの準備を要するために、抜き打ちではできない。事前演習をして、点数を上げる学校もでてくる。そもそも学力の変化をみるための学力テストは、全員調査である必要がない。調査対象を偏りなく無作為に抽出し、ある程度の数をとれば、それで信頼できるデータとなる。しかも抜き打ちで調査をするなら、前もって事前練習を行うことも防ぐことができる。実は、全員調査は行われていなかったが、抽出による学力調査は、先の高校生の学力調査のようにこれまでも行われていたのである。

という西村氏の主張には賛同する。しかし、

 ゆとり教育から決別するには、中教審と、関連する委員会のメンバーを一新するしかないことを、改めて感じさせる学力テストの内容であった。

という主張には賛同できない。
 個人が政策について責任を取る仕組みの無い官僚機構と、省庁の政策にお墨付きを与えるだけの審議会のメンバーを一新したとして、何が変わるというのだろう。
 今必要なことは、メンバーの総入れ替えではなく、きちんとした現状の把握、問題の精査、それに基づく政策の立案という政策マネジメントの確立だ。それを行わない限り、「ゆとり教育」から「反ゆとり教育」というのは、単なるバックラッシュとなり、いずれまたそのバックラッシュが起こるという従来と同じような愚行を繰り返すだけだ。
 西村氏のように「メンバーの総入れ替えだ」とか「○○を辞めさせろ」というような主張は、責任追及をして、問題を解決しているように見えて、結局、解決すべき問題は解決せずに、ただ溜飲を下げるだけで終わってしまう。それもこれまで何度も繰り返されてきた愚行でしかない。