全国学力テストと選抜試験との違いを理解すること

 全国学力テストを批判すると必ずと言ってもいいほど出てくる定番の批判がある。それは、入試などでは競争させられるのに、なぜ競争を否定するのかというものだ。しかし、それは全国学力テストと入試の違いを考えないまま批判されている。それは、逆に競争を煽るという面だけでテストを否定するのもそれと同じように違いをきちんと理解していない。
 まず、全国学力テストと入試の違いは何か。それはEvaluationとAssessmentの違いだ。
 入試はEvaluationだ。入試は差をつけることを目的とした評価であり、方法も差をつけるための評価方法が用いられる。そして、そこには「競争」が必要不可欠なものとして存在する。
 全国学力テストは、Assessmentだ。それは被評価者の現状を把握することを目的とし、現状を把握するための評価方法が用いられる。そして、そこには「フィードバック」が必要不可欠なものとして存在する。
 また、入試では評価の基準は簡単に変更されない。しかし、全国学力テストでは評価の基準は絶えず見直しの対象となる。
 さらに、入試は子どもが評価の対象者になる。全国学力テストでは教育行政が評価の対象となる。
 両者の違いを踏まえて考えなければならないのは、子どもが入試と全国学力テストから学ぶことの違いだ。
 あえて言うなら、入試は競争が必要不可欠だ。子どもはそれを通して競争について学ぶことができる。全国学力テストでは、フィードバックが必要不可欠だ。子どもはそれを通して自分を見直すことについて学ぶことができる。
 全国学力テストは競争を必要不可欠としたものではないし、全国学力テストは政策評価であり、評価対象者は教育行政なので、競争を求められるとしたら、それは子どもではない。
 競争を目的としない全国学力テストを、競争のための道具として利用しようと考えたり、競争させるためだけに存在するとして否定するのは間違いだ。
 全国学力テストと選抜試験とを混同してはいけない。両者の違いを冷静に考えて議論をすべきだ。