恣意的に学力テストの結果を用いる人たち

【主張】学力テスト 「ゆとり」の弊害変わらず

 この社説は、先日公表された「教育課程実施状況調査」をまったく見なくても書くことができる。つまり、「教育課程実施状況調査」を見た上で書いていないということだ。
 なぜそう言えるのか。まず、

 高校3年生約15万人を対象に行われた文部科学省の「教育課程実施状況調査」(学力テスト)の結果が公表され、一部では「ゆとり教育」での学力低下に歯止めがかかったとの報道も見られた。

 しかし、果たしてそうなのか。平均点では確かに落ちてはいないが、理数系や古典では「合格ライン」を下回っている。学力低下の不安は依然消えていないとみるのが妥当であろう。

と述べているが、理数系教科の場合社説の言う「ゆとり教育」導入以前から学力については問題があることが指摘されてきた。それは、http://www.kantei.go.jp/jp/kyouiku/dai2/siryou5/36.htmlを見てもらえば分かるが、科学に関しては以前から問題があった。また、それは数学などでも同じで、以前から問題があることは指摘されてきた。
 国語の問題にしても同じで、今回調査対象となった世代だけが回答率が低いということは言えない。
 何よりおかしな主張は、

 全児童・生徒が参加する「全国学力テスト」も、近く43年ぶりに小学6年生と中学3年生を対象に行われる。子供たちの学力の実態、課題を改めて把握し、「ゆとり教育」の見直しを進めなければならない。

ということだ。全国学力テストをするまでもなく解決すべき課題が何かははっきりとしている。全国学力テストを実施して改めて把握する必要性は無い。さらに、いわゆる「ゆとり教育の見直し」を今回実施された調査から必要であるという結論を導くことはできない。
 産経新聞の主張は、学力テストの内容をきちんと精査した上で導かれたようなものではない。とにかく、全国学力テストを行いたいというのと、「ゆとり教育」を批判したいという意図によって書かれた恣意的なものだ。こういうものが全国学力テストにおいても繰り返されるならhttp://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20070414/1176482149でも指摘したように、問題が解決することは無いだろう。