こういう組織、仕組みを作るべき

問題校救済に教委の力

 工業都市として発展してきたバーミンガムは、人口約100万人の半分近くが南アジアやアフリカなどからの移民だ。20年ほど前から学力向上に努め、ブレア政権発足後は、約400の全公立学校への支援や助言にあたる専門部署を作っている。最近、組織改正で新しくなった部署名は「School Effectiveness」。いわば学校救援実動部隊だ。

 日本では、学校を支援する専門的な組織はない。また、そういう組織を作ろうという議論もほとんど無い。あるとするなら、現場を監視、統制する組織を作ろうという主張や、監視、統制を強めるための権限強化を主張するようなものだ。

 アドバイザーは、各学校の財政や児童生徒の成績、出席率などを分析し、継続的に視察する。国の監査機関、教育水準局(OfSTED)が、閉校も視野に入れた最も厳しい改善勧告「特別措置」を下した学校には、1500万円前後の資金援助も含めた支援をするが、問題校となるのを未然に防ぐのも重要な任務だ。

特に、「問題校となるのを未然に防ぐのも重要な任務だ。」という部分が重要だ。問題校になることを未然に防ぐためには、日常的な支援を行う必要がある。そして、日常的な支援を行うためには、互いの信頼関係が構築されていなければできない。
 日本では、イギリスの教育改革が非常に誤解されている。その誤解の一つが、教育水準局などに対する誤解で、教育水準局は問題を抱えた学校を支援する組織であるにもかかわらず、一部の人たちからは問題のあるものを排除するための組織であるという捉え方をされている。
 最近、教師の質を問うような主張が見られるが、そこにも大きな誤解がある。イギリスなど諸外国では、教師の質の向上とともに、教師を支援する、学校を支援する組織の充実も行われている。それは、この記事に、「学校を素早く向上させるためには、実感をもってサポートできる外部組織が必要。」という発言があるように、内部の充実だけではなく、外部の支援体制を充実させることが重要であると考えられているからだ。
 しかし、日本の場合、教師の質の向上だけが主張され、教育の失敗は教師の責任であるとして、教師批判が行われ、そういう教師は排除すべきということしか言われない。そういう状況では、内部ではどうしようもないような問題を抱えたとき、外部からの支援が受けられないために、問題の解決が遅れたり、より深刻化させたりすることになる。そして、外部の介入は内部を弱体化するような形でしか行われない。
 教師や学校を支援する組織や仕組みをどのように構築するのか。本来ならば、そういう議論こそ真っ先に行われるべきではないか。批判と排除が大勢を占める今の日本の教育改革では、問題は絶対に解決しない。