議論がまったく深まっていない

教育3法改正案:要綱提示 教委の私学関与は見送る方向

 文部科学省は22日、教育関連3法改正案の要綱を与党に提示した。調整が難航していた私立学校への教育委員会の関与は、知事が必要と認めれば教委に助言や援助を求めるとの規定を新設。与党などから出ていた「私学の自主性を損なう」との懸念を受け、教委による私学への直接関与は見送る方向となった。

 政府は地方教育行政法、学校教育法、教員免許法の改正案を30日に国会提出する。成立すれば教員免許更新制が09年度、それ以外の制度改正は08年度から実施される。

 期限を切られているので、必要な議論が抜け落ちたまま法律案が作成されている。
 まず、

 調整が難航していた私立学校への教育委員会の関与は、知事が必要と認めれば教委に助言や援助を求めるとの規定を新設。与党などから出ていた「私学の自主性を損なう」との懸念を受け、教委による私学への直接関与は見送る方向となった。

ということについて。これは、http://cala99.at.webry.info/200703/article_2.htmlでカラさんが指摘されているように、なぜ私学に対する関与強化だけは簡単に外されるのだろうか。きちんと、公立の学校と私立の学校との役割などについて議論し、明確にした上で、私学への関与を見送るというのならまだ分かる。そういうこともなく簡単に外れるというのはおかしい。
 また、

 地方教育行政法では、国の権限強化策として「緊急に生徒の生命・身体を保護する必要」があれば、文科相が教委に法的拘束力を持つ指示を出せる。履修不足など「教育を受ける権利が明白に侵害」された場合には、より緩やかな是正要求を行う権限を付与する。

ということだが、いわゆる「履修不足」が「教育を受ける権利が明白に侵害」された事例であるというが、本当にそう言いきれるだろうか。もし、教育を受ける権利の侵害であるとするなら、あのような曖昧な決着で済ませられない問題のはずだ。
 次に、

 このほか原則5人となっている教育委員の数を都道府県と市は「6人以上」、町村は「3人以上」に弾力化。保護者を教育委員に任命する規定を、現在の努力規定から義務規定に格上げする。

について。なぜ6人と3人以上なのかよく分からない。その根拠は何なのだろうか。保護者というのは誰なのか。どういう基準案のだろうか。こういうもので、「名誉職化」していると言われる教委からなぜ変われるのだろうか。
 また、

 学校教育法では、義務教育の目標として「我が国と郷土を愛する態度を養う」と表記。教員免許法では、都道府県教委が公立学校教員の指導力を「不適切」と認定した場合、1年以内の研修で改善がなければ免職や配置転換などの措置を取るよう定める。

というが、「不適切」と認定された教員に対して1年以内の研修を課すというが、その研修が効果をあげるためには何が必要なのかという議論は同時進行では進んでいない。
 現状の研修では、復帰する教員が少ない。現在行われている研修が効果のあがるものになっていないからだ。そこを検証・議論せずに制度だけを先に導入するのはおかしい。
 とにかく法律を改正することが優先されるので、必要な議論は十分に行われていない。先日も書いたが、重要な法律がこうやって改正されるのは間違っている。