思考停止の中で進む規制強化

「未履修」多発、私学指導に教委関与へ 文科省方針

 文部科学省は19日までに、私立学校をめぐる行政に教育委員会を関与させる方針を固めた。私学行政は都道府県の知事部局が担当するが、私立の未履修発覚高校が公立の2倍以上に達するなど、指導の強化が必要と判断した。文科省は近く、中央教育審議会中教審)に教委の権限付与を含めた骨子案を提示。中教審での審議を経て、教委と首長の教育行政の範囲の弾力化を盛り込んだ地方教育行政法改正案を今国会に提出する方針だ。

 未履修の問題については、苅谷剛彦氏がhttp://www.chikumashobo.co.jp/new_chikuma/kariya/02_1.htmlで問題をきちんと指摘されているので省略。
 「学習指導要領が特に私学でないがしろにされている」。これはけしからん。だから、指導する権限、つまりは規制をかけようという。ここで問題にしたいのは、私立の学校がなぜ存在するのか。私立の学校の存在意義はどこで何によって保障されているのか。そういった根本的な問題に帰って議論されることなく進んでいくことだ。
 最近特に、学習指導要領に反する。それは「いけない、けしからんこと」とし、それを「守らせる」ために、安易に国や教育委員会の権限強化が主張される。
 それは、教育の問題がどうにもならない、閉塞感に覆われているために、そこから「強制的に」抜け出すための方法として仕方のないことと考えられているのかもしれない。
 権限強化は規制の強化であり、自由度や柔軟性を低下させるものだ。それは、教育にとって重大な問題だ。そういう問題が、何かに反した、何かから外れている。けしからん。というだけで安易に権限強化へと向かう。そういう安易な意思決定が、根本的な部分についての議論を欠いたまま行われている。それは、看過できる問題ではない。