学力の問題 こう考える

本田由紀教育再生会議を批判する」をめぐって:学力は低下しているのか?

 学力の問題を次のように捉えてみると良いのではないか。OECDPISA調査の結果は、「OECDが示した学力枠組みに基づいてみたとき、そのテストを受けた子どもたちの学力(OECDの学力枠組み内に限定)に課題が見られた。」ということを示しているのだと。つまり、PISA調査の結果は経年変化から得られる「学力低下」を示すものではなく、その時点での子どもの学力の課題を示すものであるということだ。
 ここはきちんと強調しておきたいのだが、PISA調査で用いられた学力の枠組みはこれまで日本において考えられていた学力の枠組みとは異なる。だから、リテラシーを単に従来の意味での「応用の学力」と捉えるのは間違っている。それにもかかわらず、PISA調査の結果が公表されたとき、従来の意味での「応用の学力」と捉えられ、そこから応用には基礎が不可欠であるというこれまた従来の学力の枠組みが持ち出され、基礎・基本の充実が不可欠であると結論付けられた。
 そこから学力の問題は混乱し始める。PISA調査の結果公表の後、TIMSSの結果が公表される。これは従来の意味での「基礎の学力」と受け止められ、基礎も応用も課題があるという見方が広まった。しかし、PISAとTIMSSでは本来学力の枠組みは異なっている。だから、両者を基礎と応用と捉え、結びつけることは短絡的な考え方である。そのうち、何もかも混同し、きちんと区別をつけないまま、「学力低下」という曖昧な枠組みの中で議論が行われ、対策が講じられてきた。西村和雄氏などの言う「学力低下」論は、PISAやTIMSSの結果とは同列に考えられるものではないということも強調しておきたい。
 そして、もう一つ指摘しておきたいことがある。PISAやTIMSSの結果を根拠として学力の低下が指摘されながら、各地の教育委員会が実施してきた学力調査、また来年度(今年4月)実施される全国学力テストを見てもらえばわかるが、そこで実施された(される予定)の学力テストの「学力枠組み」はPISAやTIMSSとは異なるものだ。
 PISAやTIMSSの結果から学力に課題があると考え、対策を講じられるなら、そこで使われた学力枠組みを用いて追跡調査が必要となる。しかし、それとは異なる従来の「日本における学力枠組み」による学力調査が実施されている。
 そこには明らかに矛盾が生じている。たとえばPISA調査の結果から得られた課題について必要な対策を講じるとするなら、従来の学力の枠組みに基づいた対策とは異なる点が出てくるはずだ。そして、その対策の結果について評価するにはPISAと同じ学力の枠組みを用いる必要がある。もし、それとは異なる枠組みを使えば、そこから共通点を探し、推測するという方法にならざるを得ない。だから、本当にPISAの結果から得られた課題が克服されているかどうかは、現時点ではわからないと考えるのが妥当だ。
 以上のことを考えた場合、今、考えられている学力の問題は、経年変化としての「学力低下」ではなく、現時点における問題であると捉えることができる。今回は、学力をどう捉えるかという問題だけについて考えてみた。教育再生会議の示した対策の問題点については次の機会に考えたい。
 そして、話が反れるかもしれないが最後に指摘しておきたい。PISAやTIMSSの結果は、教育政策の最終的な結果ではなく、通過点であるということだ。4月に実施される全国学力テストも同じだ。だから、そこに現れた結果というのは、良く言えば、これから改善できるという可能性を示しているということだ。学力テストの結果は、次につなげていくことが重要であり、単に点数の上がり下がりだけを見て論じられるものではない。

七星来人さんが学力低下いついて考察されています。「学力は低下しているのか?」(http://blog.livedoor.jp/sevenstarslight/archives/50905699.html)私のよりも参考になると思います。ぜひ、読んでください。