最近読んだ論文から

村山航「テストへの適応―教育実践上の問題点と解決のための視点―」『教育心理学研究』Vol.54, No.2(20060630)

 学力低下が声高に叫ばれるようになって、各地で学力テストが実施され、4月には全国学力テストが実施される。そのような状況の中で、学力テストに頼り切ってしまうようなことも出てきている。この論文は、学力テストの限界について最近の研究成果も踏まえて論じている。学力テストについて再考させられる論文だ。
 http://ci.nii.ac.jp/cinii/servlet/QuotDisp?LOCALID=ART0007492575&DB=NELS&USELANG=jpで読むことができます。
以下抄録を引用しておく。

 学習者は,テストを受ける中で,"テスト作成者はこういったことを評価したいのだ"とその評価基準・意図を推察し,それにあわせて自らの学習行動を変化させることがある。本稿では,そのような現象を"テストへの適応"と呼び,関連領域を包括的に概観しながら,1)実証的にどのような形で支持されているのか,2)どのような教育実践上の問題点を持っているのか,3)その問題を解決するための視点として何が考えられるか,の3点に関して検討を行った。実証的な支持に関しては,テスト期待効果研究と学習方略研究を取り上げ,それらを統合的に捉える仮説を提出した。問題点としては"学習行動の危機"と"妥当性の危機"という2点を指摘した。最後にこれらの問題を解決するために,テストワイズネス・テストスキルの個人差の排除,新しい評価(alternative assessment)の導入,インフォームドアセスメント(informed assessment),妥当性概念の拡張,表面的妥当性への意識,という5つの視点を提出した。