改正しても絶対に困らないですね?

 現行の教育基本法第十条は

第十条 (教育行政) 教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。
○2 教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。

となっていて、第十一条は、

第十一条 (補則) この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。

となっている。それが、与党が提出している教育基本法改正案では、

第十六条 教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。

2 国は、全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない。

3 地方公共団体は、その地域における教育の振興を図るため、その実情に応じた教育に関する施策を策定し、実施しなければならない。

4 国及び地方公共団体は、教育が円滑かつ継続的に実施されるよう、必要な財政上の措置を講じなければならない。

 (教育振興基本計画)

第十七条 政府は、教育の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、教育の振興に関する施策についての基本的な方針及び講ずべき施策その他必要な事項について、基本的な計画を定め、これを国会に報告するとともに、公表しなければならない。

2 地方公共団体は、前項の計画を参酌し、その地域の実情に応じ、当該地方公共団体における教育の振興のための施策に関する基本的な計画を定めるよう努めなければならない。

   第四章 法令の制定

第十八条 この法律に規定する諸条項を実施するため、必要な法令が制定されなければならない。

となっている。現行の教育基本法第十条が改正される問題点は既に様々なところで指摘されてきた。それと同じことをもう一度繰り返して言うならば、改正されると、教育行政の側にとっては恰好の逃げ場が出来上がり、また、強力な武器となる。
 例えば、諫早の埋め立ての例で言うと、諫早を埋め立てるための予算は法律に基づいて執行されている。だから、それに異議申し立てを行っても行政府が裁判で負けることはほとんどない。また、既に行われた干拓を元に戻すこともできない。それと同じことが教育でも行われることになる。
 教育が常に間違うこともなく正しいというのであれば、行政府に任せることはできるかもしれない。また、決して行政府が国民の意思に反するようなことをしないというのであればそれも良いかもしれない。しかし、教育基本法が改正された後、そういうものを止めるための「歯止め」がどこにあるというのだろうか。また、責任をとらせる仕組みがどこにあるというのだろうか。
 例えば、教員などが何らかの異議申し立てを行うことになった場合。改正案が通ればほとんど裁判では敗訴になるだろう。それは子どもであろうと保護者であろうとも同じことだ。法律に基づいて予算が執行されたり、処分が行われている限り、それはよほどの瑕疵がない限り法律違反にならない。
 このようなことを書くと、想像力がたくましいと揶揄されるかもしれないが、本当に改正案を通して困ることはないのだろうか。それをもう一度よく考えてもらいたい。日教組を排除しなきゃいけない。憲法改正の前哨戦だと言って、そういうことから目を背けていないだろうか。もう一度言います。教育基本法が改正されても絶対に困らないですね?