まともに議論されない教育基本法

 教育基本法に関する議論で不満なのは、きちんとした議論がされないことだ。現行の教育基本法が制定されるまでの議論と、現在の議論との大きな違いは、学問や事実に依拠した議論がほとんど行われずに、占領下につくられたものだから、社会状況が変わったから、教職員組合の影響を排除したいからなど、感覚的なもの、感情的なものに依拠した議論が行われているということ。
 現行の教育基本法が制定される際の帝国議会の議事録を読めば分かるが、佐々木惣一氏や澤田牛麿氏などは法学者として教育基本法に対して法律学に依拠した批判を行ったし、他の議員も同様の議論を行っている。だから、議論が咬み合っていて、建設的なものになっている。
 今の教育基本法改正案の議論は、一方通行の議論ばかりで全く議論が咬み合っていない。それは、お互いに依拠しているものが共有できていないか、共有できていても大半が感覚的なもので議論できるものではないからだ。だから、改正理由の事実認定も行われないし、批判もできない。法律論と教育論とを区別できていないから、法律に徳目を書き込むことの是非さえも議論されない。基本法と各法の区別も付かないでおきながら、それは各法制定の際に議論すべきだなどと言って必要な議論を途中で打ち切ろうとする。
 まともに法律論からも教育論からも議論が行われずに、教育基本法が改正されるのは間違っている。100時間近い時間を費やしてもそんな議論では、議論していないに等しい。もう少しまともな議論をしてほしい。