教育再生?

教育再生』シンポジウム開催 教育現場を変える運動を開始

 このシンポジウムでどんな議論があったのか分からないのであまり言えることはないのだけれど、annntonioさんのブログでバウチャー制度について少し触れられていたので、バウチャー制度について少しだけ。
 広田照幸著 『教育 (思考のフロンティア)』のなかで広田氏がマイケル・アップルの次のような指摘を引用している。

 アメリカで、貧困層の教育改善を意図してチャータースクールやバウチャープランの案をかつて支持していたM.アップルは現在では批判的なスタンスをとるようになった。それは実際には、アメリカでは「白人中産階級の親が資金不足の公立学校から逃げ出すことを支援する」ために、公的資金が使われる結果になっているからである。「私達は、チャータースクールを、提唱者が夢みた文脈において理解してはならない。これはチャータースクールが意図したことではなく、それがもつ機能なのだ」と彼はいう。

 民主党は、バウチャー制度が教育格差の解消につながると考えているようだ。しかし、それはアップルが言う「提唱者が夢みた文脈」ではそうなるということであり、実際に格差解消につながるとは限らない。既にバウチャー制度を導入している事例を見ると、格差解消につながらずにむしろ格差を生む結果になっている場合が多い。
 また、最近の教育改革について共通していることは、改革によって少々の悪影響が出るのは仕方ないというように言われることだ。しかし、この程度は仕方ないと考えられていることは、実は過小評価されていて実際には多大な悪影響を及ぼしていることも少なくない。
 民主党は、教育に予算をかければいいということをすぐに言うし、それしか言わないし、そこぐらいしか自民党との差はない。しかし、問題はそれだけでは解決しない。予算をかけても必要なところにきちんと予算が回らなければ何の意味もないし、それによって格差が拡大するというようなことになれば意味がない。
 民主党にしても自民党にしても教育改革の悪影響を過小評価している。また、欧米では必ずしも成果を上げていない施策を無批判的に導入しようとする。それは「提唱者が夢みた文脈」においてのみ理解しているからだ。