いろいろと見えてきた

教育基本法改正Q&A

 気になった箇所をいくつか引用しておきます。

 更に、戦後社会や教育現場においては、個性の尊重や個人の自由が強調される一方、規律や責任、他人との協調、社会への貢献など基本的な道徳観念や「公共の精神」が、ややもすれば軽んじられてきました。
 その結果、ライブドアの決算粉飾事件や耐震偽装建築問題に代表される拝金主義やルール無視の自己中心主義が、日本社会や日本人の意識の中に根深くはびこり、日本の将来を危うくする事態に陥っています。特に人口減少社会の進行、アジア諸国の台頭・発展などを鑑みれば、こうした問題に一刻も早く手を打つことが、我が国の存立のための喫緊の課題といえます。

 教育がそこまで社会に大きな影響を与えるのだろうか。もしそうならば、それこそ教育についてもっと慎重な議論が必要だし、数年もしないうちにめまぐるしく変えるなんてことはできないはず。

  • 問2 教育基本法の改正について、国民世論はどう見ていますか。

 また、読売新聞の調査では、「豊かな情操や道徳心を培う」、「公共の精神を尊ぶ」などを特に重要な徳目と考えていることが明らかになっています。

■ 読売新聞社による世論調査(平成18年5月13、14日実施)
教育基本法改正案について
賛 成 66.7%(「賛成」 28.1%、「どちらかといえば賛成」 37.6%)
反 対 14.2%(「反対」 5.6%、「どちらかといえば反対」 8.6%)
無回答 20.1%

○とくに重要だと思う改正内容(8つの中から複数回答)
『豊かな情操と道徳心を培う』という表現を加える 48.4%
『公共の精神を尊ぶ』という表現を加える 36.0%
『国際社会の平和と発展に寄与する態度を養う』という表現を加える 28.5%
『職業及び生活との関連を重視し、勤労を重んずる態度を養う』という表現を加える 26.0%
『我が国と郷土を愛する』という表現を加える 25.9%
『保護者は、子の教育について第一義的責任を有する』という表現を加える 24.0%
『伝統を承継する』という表現を加える 20.6%
義務教育の年限に幅をもたせられるように、現在の9年の規定を削除する 6.0%

 読売新聞の調査では選択する項目があらかじめ決められている。だから、それ以外の意見はそこに反映されないのではないか。

  • 問3 「教育の憲法」である教育基本法の改正は、憲法と合わせて改正すべきという意見がありますが、どうですか。

1. 教育基本法は、「国民主権」、「個人の尊厳」、「法の下の平等」、「教育を受ける権利」など憲法に定める理念を教育において具体化するための規定を多く含むなど、憲法と密接に関連する法律であることは事実です。
 こうした点を踏まえ、教育基本法改正案では、前文に「日本国憲法の精神にのっとり」を規定し、教育基本法憲法と密接に関連している性格を引き続き明確にしました。

3.今後、憲法改正が行なわれた場合、その改正内容に応じ、教育基本法に不整合な箇所がある場合には、教育基本法の改正を改めて検討することとなります。

 これは、現行の憲法との関連性を強めたということではない。憲法が改正されれば教育基本法もそれに合わせて改正されるということ。憲法改正を前提としている。

1. 戦後社会や教育現場においては、個性の尊重や個人の自由が強調される一方、規律 や責任、他人との協調、社会への貢献など基本的な道徳観念や「公共の精神」が、ややもすれば軽んじられてきました。
2. こうした反省に立って、これからの教育においては、国や社会の問題を自分自身の問題として考え、積極的に行動するという「公共心」や、善悪を判断する力、社会の一員としての規律や規範などの「道徳心」を身につけることが、大変重要です。
3. このため、教育基本法案では、前文において「公共の精神の尊重」、「豊かな人間性と創造性」を明記するとともに、教育の目的実現のために今日重要と考えられる具体的な資質として、「豊かな情操と道徳心」、「公共の精神」を教育の目標(第2条)の中で位置づけているところです。
4. こうした規定を踏まえ、教育現場において、「公共の精神」や「道徳心」をはぐくむ教育の充実を進めていく必要があります。

 本当に批判すべきは、法律にあるから実施せよとか、法律にないから実施しないという主張だ。学習指導要領に盛り込まれているからやらなければならないとか、学習指導要領に盛り込まれていないからやらなくて良いという主張も同じ。

  • 問6 自民党が求めていた「国を愛する心」が明記されず、「我が国を愛する態度」という規定になったのは、何故ですか。

1. 検討の過程では様々な議論がありましたが、「国を愛する」という心情を育むことが大切だと考えております。
 改正案では、我が国を愛し、更にその発展を願い、それに寄与しようとする「態度」を規定しており、この「態度」を養うことと、「心」、「心情」を培うこととは、一体としてなされるものであり、このことを踏まえて、「態度」と明記したものです。

 態度を規制することと、「心」、「心情」を規制することは、一体としてなされるもの。また、態度を評価することと、「心」、「心情」を評価することは、一体としてなされるもの。だから、そういうものが法律に盛り込まれることに反対をしている。

  • 問7 「伝統や文化の尊重」や「国を愛する態度」が明記されることにより、学校現場での指導はどのように変わりますか。また、評価はどうなりますか。

3. また、「我が国と郷土を愛する態度」の評価については、我が国の伝統や文化等の学習内容について、進んで調べたり、学んだことを生活に生かそうとしたりする関心・意欲・態度を総合的に評価するもので、子どもたちの内心に立ち入って評価するものではありません。

4. 具体的には、歴史上の人物などに関心を持ち、意欲的に調べたり、学んだことを基に、我が国の将来やその発展のために自分に何ができるかについて、考えながら追求しようとしているかなどを評価するものです。

 進んで調べたり、学んだことを活かそうとするから国や郷土を愛していることには必ずしもならない。また、歴史上の人物などに関心を持ち、意欲的に調べることについても同じ。
 「関心・意欲・態度を総合的に評価するもので、子どもたちの内心に立ち入って評価するものではありません。」態度と心が一体だと言いながらなぜこの場合だけは別なのか。

  • 問9 法改正により、幼児期の教育の振興が新たに規定されましたが、幼稚園等の教育は無償化されるのですか。

3. 自民党では、幼児教育の充実は極めて重要な政策課題と考えており、かねてから私学助成の充実や、幼稚園就園奨励費補助金の充実に努めてきたところです。さらに国 家戦略として幼児教育を展開していくことが重要との認識の下、保育園・幼稚園の幼児教育機能の充実を図るとともに、幼児教育の無償化を目指すことを昨年の衆議院総選挙の政権公約として掲げています。

 幼児教育に関する規定を設けることと、幼児教育の無償化はリンクしない。幼児教育の無償化が必要なら、必要な法律を新たに制定したり、法律を改正することで実現できるはず。教育基本法に幼児教育の項目を入れなければできないものではない。
 また、幼児教育は無償化するのに、高等教育が無償化できない理由は何か。

問11 「宗教的情操の涵養」が盛り込まれなかったのは、何故ですか。

1. 自然や生命に対する畏敬の念を養うといった意味での「宗教的情操の涵養」は、重要なことです。ただし、「宗教的情操」という言葉は多義的であり、特定の宗教・宗派を離れて教えることが困難との意見もあって、国公立学校で教えることが憲法政教分離の原則に抵触する恐れもあることから、文言としては盛り込まないこととしたところです。

  • 問12 法改正により、学校現場での宗教教育はどのように変わりますか。

3. また、現在、国公立学校における宗教教育の取扱に関して、特定の宗教のための宗教教育の禁止を拡大解釈する傾向があり、宗教に関する知識や宗教の意義を教えることが不十分な状況にあります。

4. これらを踏まえて、主要宗教の歴史や特色、世界における宗教の分布などの「宗教に関する一般的教養」を新たに規定することにしました。これにより、学校現場における宗教に関する教育が適切に行なわれるとともに、誤った解釈が行なわれないように指導が徹底されるよう、政府に求めていきます。


 宗教教育は私的領域で行うことは可能なのではないか。なぜ学校で一律にやらなければならないのだろうか。

  • 問13 「不当な支配に服することなく」という規定が残ったのは何故ですか。

1. 「不当な支配に服することなく」とは、教育が一部の勢力に不当に介入されることを排し、教育の中立性、不偏不党性を求める趣旨です。
 しかしながら、この規定は、現行法の「教育は、・・・国民に直接に責任を負って行われるべきものである」や「教育行政は、・・・必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない」との規定ともあいまって、一部の教職員団体等により、教師のみが教育権を持ち、国や教育委員会は教育内容や方法に関われないという誤った主張がなされてきました。このような考えから教育委員会や校長等による指示、指導を認めない根拠となってきました。

2. また、一部の教職員団体等によるこのような誤った考えに基づいて、入学式や卒業式等での国旗掲揚や国歌斉唱に対する反対がされてきました。

3. このため、これらの規定を整理し、「不当な支配」以外の規定は削除し、「教育は、不当な支配に服することなく、法律の定めるところにより行なわれるべき」ことと規定し、法律に従って行なわれる教育行政、教育委員会や校長等の行為が「不当な支配」に当たらないことを明確にしました。

4. このような改正によって、校長の権限を侵すなど教職員団体などの一部勢力による、法律に反する「不当な支配」のための従来のような主張の余地がなくなり、指導内容・方法に関することを含め、適正な教育行政の実施が確保されることになります。

 こういう一方的な主張は認められない。これまで、一度も行政が教育を不当に支配することが無かっただろうか。これから行政による不当な支配はないと断言できるだろうか。一方だけを規制しておいて中立・不偏不党などと言えるだろうか。

  • 問17 教育振興基本計画には、どのような事項が盛り込まれるのですか。

1. 教育振興基本計画の策定により、教育施策の総合的・計画的な推進を実効あるものにするためには、欧米諸国に比べて低位にある我が国の教育に対する公財政支出を拡充していくことが何よりも必要であり、例えば、教育投資の具体的な目標を設定するなどの拡充のための取組を、自民党としても積極的に進めていくことが重要です。

2. 自民党において教育振興基本計画に盛り込むべき事項を独自に検討していく必要がありますが、例えば、党として重視してきた次のような政策を教育振興基本計画にしっかり位置づけられる必要があると考えます。
○ 私学助成の大幅拡充
○ 幼児教育の無償化
○ 専修学校教育の振興
○ 教員や教育を支援する職員の配置の充実 等

 これによって、教育は道路などと並ぶ利益を生む利権へと成長する。教育振興基本計画によって様々な規制を設けることも可能になるし、利権誘導が第一の目的になる危険性もある。そういうものが本当に必要だろうか。