教育基本法は本当に準憲法的役割を担っているのだろうか

 教育基本法の第十条の問題を考えていくと、教育に関する様々な法令との関係を見る必要がある。その中でどうしても引っかかるのは、教育に関する法令の体系は教育基本法を頂点とする体系になっているのか。教育基本法は本当に準憲法的役割を持っているだろうかということだ。
 教育基本法第十条についてはこれまで多くの議論が積み重ねらえてきた。しかし、その議論の積み重ねを経てもなお問題は解決できてない。近年ますます混迷を深めているように思う。それは、教育基本法が制定された当時の状況とは様々な点で異なってきているからであり、その変化は自然に変化したのではなく、恣意的に変化させられたものだ。
 これは、今後きちんと説明していかなければならないが、教育基本法第十条を現状のまま放置してしまうと、法解釈などで大きな矛盾をもたらすことになる。また、教育基本法第十条は、教育に対する不当な支配を排除するのには限界がある。逆に不当な支配を正当化する危険もある。という問題がある。
 現教育基本法の制定当時前提としていたもの、例えば、教育委員会制度などが大きく変化している。そういう変化に対して、現教育基本法は積極的に対応できなくなっているように見える。その点を考えると一字一句改正すべきでないという意見には私はあまり賛同できない。
 ここで主張する改正すべき方向は、与党とは全く異なる。与党案は教育を政治にとってより使いやすくするための改正であり、政治からの影響を大きく受けるものになる。
 ここで主張するのは教育基本法と他の法令との関係を整理し、位置付けし直すこと。さらに、教育に対する政治の一方的な介入を抑制すること。政治の変化に大きく左右されない環境を教育基本法で担保することだ。
 そういうことからも教育基本法第十条をどうするかは決して小さな問題ではない。誤解を招かないためにも明記してきたいのは、現在の教育基本法を改正しようとする動きには賛同しないということだ。