ドンキホーテな教育論

【正論】激震、参院選 京都大学経済研究所所長・西村和雄

 西村氏だけではないけど,「ゆとり教育理念」なるものや「ゆとり教育」が一貫したものであるかのように捉えられている。しかし,「ゆとり教育」は行き当たりばったりの教育政策の結果に過ぎないのであって「ゆとり教育」という一貫した明確な理念は存在しない。
 よく「ゆとり教育」をイデオロギーのように捉え,それを排除すればよいと言う主張があるが,「ゆとり教育」と言うものはいったい何で何がゆとり教育ではないのか。そういうものを排除せよと言って何を排除するというのか。「ゆとり教育」も「新学力観」も様々な人がそれぞれの考え方を述べて,それが様々な教育政策として現れてきたに過ぎない。
 「ゆとり教育からの脱却」と言えば,それだけで何かが変わる,現状が変わると思いがちだが,「ゆとり教育からの脱却」と言っているものは白を黒に変える,表を裏に変えるということでしかない。
 「ゆとり教育」という実態のないものに果敢に挑んで見せて教育再生などと言うのはドンキホーテのようだ。ドンキホーテのような教育論にいつまでつきあわされるのだろうか。