なぜ検証の必要性をしつこく主張するのか

 全国学力テストの実施までに検証すべきだったこととして、次のようなものを挙げたい。
 これまで、各自治体ごとに学力テストが行われてきた。その結果、様々な課題が指摘されてきた。特に、記述問題の未解答の多さ、記述問題の正答率の低さなどは毎回、どの調査でも課題として指摘されてきた。
 そして、それは毎回課題として上がるということから分かるように、調査後に講じられたはずの対策が功を奏していないことを示している。
 各自治体ごとの学力調査について分析し、特定の課題が一向に改善の傾向に向かわない要因を予測することができる。全国学力テストでは、予測された要因についてどのような対策を講じればいいかということを検討するために必要なデータを収集できるように設計し、実施できる。
 そうやって焦点化することで、これまで実施された調査との違いが明確になり、全国学力テストと地方で実施される学力テストとの役割分担が明確になる。
 検討開始から実施までの期間が短ければ、「焦点化」することで、短期間で問題等の作成が可能だし、調査の目的をより明確化することができ、調査結果がどのような意味を持つのか分かりやすい。
 また、多額の予算等を投じるのであれば、一定の成果を挙げなければならない。調査項目等を「焦点化」することで、その成果について評価しやすくなる。
 また、焦点化することで、フィードバックされる情報も絞り込まれたものになるため、そこから導き出される対策も焦点化することができる。
 今回実施された全国学力テストでは、「焦点化」は十分に行われていない。焦点化の必要性は、専門家の検討会議でも何度も指摘されている。それにもかかわらず、なぜそうならなかったのか。
 また、必要性が主張されていながら、焦点化するために必要な検証が具体的にどのようになされたのか議事概要を見ても定かではない。行われたという予測は可能だが、実際の問題、調査項目等を見ても、どのようなものに焦点化して調査したのか見えない。
 「焦点化」ということに限っても、検討会議で十分に議論されたとか、明確になったとは思わない。その他の点も含めて考えてみても、検証が十分でないという結論づけてここで主張している。
 実施したのは専門家だからそういうことは承知しているはずだというような予想や期待はいくらでもできる。しかし、だからといって批判をすべきではないとは思わない。
 こういう問題があるじゃないかと指摘し、それに対して応答していくということがあって全国学力テストは改善されていく。それは実施前から必要なことであり、「やってみなければ分からない」とかいうことで問題点を指摘したりすることをしないというのは間違っている。
 これまでの教育改革も、今進められている教育改革も、「とにかくやってみてから」とか「やってみなければ始まらない」というようなレベルで改革が実施され、その後の評価なども行われず、駄目みたいだから他のものを何かやってみようということを繰り返している。
 また、国がやることや行政のやることを批判するなと言われるのだとしたら、それは間違っている。
 教育改革でもPDCAサイクルの確立ということをよく言われるが、そう言う方たちがやっていることはPDCAサイクルとは程遠いものだ。http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20070509/1178637867で紹介したように、与党内からも教育改革の進め方に疑義が提起されている。全国区力テストも例外ではない。〜のはずだ。だけで好意的に解釈し、全国学力テストを批判することに対して、批判などやめろなど言われるなら、PDCAサイクルなど確立されるるはずがない。

(追記)

 全国学力テストについて何度も同じようなことを繰り返し書いているのは、大人気ないし、ここでいくら書いても、何の影響も及ぼさないでしょう。
 ここで主張している内容について、問題があればどのような方からの批判に対してもできる限り応答していくつもりです。しかし、何が問題なのか具体的にならないものについては今後も応答しかねます。