家庭教育と学校教育

【解答乱麻】学校が家庭を弱くした

 ところで、私はこの共通認識に対して若干の疑義がある。結論から言えば「家庭教育力の低下」を招くようになった大人に育てたのは一体誰なのか、という重要な問いの欠落への疑義である。家庭教育力の低下を招くような大人にしか育てられなかった学校教育こそが真っ先に問題にされるべきではないのか、という疑問である。
 教育の目的は、新旧法ともその第1条に明記されている。要するに教育は「人格の完成を目指し、国家及び社会の形成者としての資質づくり」が目的なのだ。「心身ともに健康な国民の育成」こそがその根本目的である。そのための専門機関が「学校」である。学校は教育の専門家集団が専門的、系統的に教育を行う機関であり、そこが家庭や社会と大きく異なる特質だ。
 家庭や社会は教育の専門の場でもなければ機関でもない。教科書もないし、教育計画もないし、その道の専門家もいない。家庭の教育は、親という教育的には素人によって、いわば思い思いになされるしかないし、それが限界であり、自然である。
 家庭教育は無力だとか、軽んじてよいなどと言うのではない。それなりの重要性は十分に認識したその上で言うのだが、学校教育が目先の忙しさに幻惑され、「かかる火の粉を払う」ことにのみ急で、「国家及び社会の形成者としての資質づくり」という本来の根本任務を果たせずにきたのではなかったか。

 もし、これを読んで教員が俺たちは専門家、親は素人なんだという短絡的な考え方を持つとしたら、それは全くの間違いだ。教員の専門性をこのように矮小化して捉えるべきじゃない。教員の専門性は親の素人性の対極にあるものではない。
 家庭教育については、http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20070102/1167702009で紹介した鈴木氏の指摘や広田照幸氏も指摘されている。家庭は常に理想像としてあり、家庭教育も同様に常に達成せざるものとして捉えられている。しかし、それは、いわゆる「家庭教育の危機」とは連動しない。そして、広田氏が言うように、家庭の教育力が低下しているというのは現実の状況を反映したものではない。