また、学力の問題

小中学生の学力、計算問題の“応用”が苦手

 調査は昨年3月に小中学生1万1000人に整数や小数、分数をめぐる加減乗除の計算問題などを解かせた。90%が整数の足し算で正解、引き算は80%が正解と、提示された計算問題はほとんどがクリア。
 計算技能で唯一、正答率が低かったのは小5に出した「0.4×0.7」の問題(正答率55.5%)。「2.8」とした児童が多く、正解に至る第1段階の「4×7」はかけ算で正しくできたが、小数点の位置を間違う生徒が目立った。
 課題が見られたのは、割合などを使って量を的確に関係づける問題。「7kgの0.3倍は□kg」などの問題に小5の7割超は正答しながら、「6リットルは□リットルの1.2倍です」と基準量をたずねる問題では正答率は50.3%に。小6も「4/5メートルの重さが6/5kgの鉄棒の1メートルの重さは?」などの問題を正しく解いたのは53.1%にとどまった。
 「47÷4」について電卓を使った計算結果(11.75)を問題文であらかじめ示した上で、「商(11)と余り(3)を整数で答える」よう小4から中学生の全学年に求めた。この問題は計算技能でなく、計算の意味や「被除数」と「除数」、商と余りの関係に着目させる問題だったが、商を7割近くが正しく答えながらも、余りについては正答率が全学年で5割未満だった。

 他紙の記事も書いてある内容はほとんど変わらない。この記事を選んだのは、

式を示されれば計算できるものの、意味の理解や、文章から式を立てるといった“応用”は苦手−。

というところに引っかかったから。この記事を書いた記者は、計算技能を「基礎」とし、意味の理解や、文章から式を立てることは「応用」だと考えているようだ。(訂正と補足 他の記事を見ると、調査を行った総合初等教育研究所がそういう見解を示しているようだ。なので、この表現は正確ではないのでこの部分を削除し、記事を書かれた記者にお詫びします。)なぜそういう位置付けになるのだろうか。
 そういう風に位置付けているのは、この記者だけでなく、学校現場や一般でも同じだろうと思う。だから、学校でも家庭でも塾でも「基礎学力の向上」ということで計算技能を向上させるための計算ドリルが行われてきた。
 おそらく、そういう考え方は昔からあったのだけど、PISAの提示した学力、特に「リテラシー」という言葉を「応用力」と捉えてしまったことでその傾向はより強まった気がする。また、陰山氏の百マス計算などの流行も影響している。
 この記事で取りあげられた調査だけでなく、最近の学力調査のどれを見ても、計算技能だけをいくら高めても意味の理解や、文章から式を立てることはできないということ。だから、計算技能は「基礎」、意味の理解や、文章から式を立てることは「応用」として、「基礎」が先で「応用」は後だということで計算技能ばかりをやるのは間違いだ。どちらかを先にしなければならないのではなく、どちらも数学においては「基礎」なのであり、どちらも同時に行うことが重要だ。
 これは、数学だけに限らない。基礎が先、応用は後ということでドリルのようなことばかりをやって他のことは後回しにしている。そういのが「基礎学力の向上」ということで行われている。「基礎学力」というのをとても狭く考えてしまっているし、見えやすくて成果の分かりやすいものだけを「基礎学力」と考えてしまっている。そういう狭い「基礎学力観」にとらわれずにやっていくことが重要だ。