このような捉え方が問題

朝食とる子、とらない子…数学・英語に学力差−−中学生正答率 /神奈川

 朝食をとる子と、とらない子で学力差がでるという話だが、これは、学力の問題を矮小化している。学力の問題は複雑な背景が考えられ、子ども一人一人学力に影響を及ぼしている要因は異なる。また、きちんと朝食を毎日食べさせたくてもできないという現実に対して、学力向上のために毎日朝食をというのは非現実的な対応となる。
 これは、「脳を活性化させる」ことが「学力向上」につながるという問題とよく似ている。「脳を活性化させる」というだけでは学力は向上しない。なぜなら、それ以外の要因が関わってくるからだ。しかし、現実には「脳を活性化させる」ということだけが行われ、それ以外の要因は忘れ去られている。そのために、学力は一向に向上しない。
 また、基礎・基本の徹底が学力向上につながるということで、基礎・基本といわれるものを何時間もかけてやっている。しかし、学力テストを実施すると指摘される問題は思考力がないというようなもの。基礎・基本を何時間かけてやっても、それが自動的に幅広い問題へと適応できるようになるだろうか。決してそうではないはず。しかし、基礎・基本しかやらない。
 朝食をとるかとらないかという問題は、学力に影響を及ぼしている要因の一つに過ぎない。そうであるにもかかわらず、そればかり強調されると問題を矮小化してしまう。問題に対して総合的・多面的な取り組みが必要であるのに一面的な取り組みしかできなくなる。それは、現在実施されている学力向上への取り組みの大半に見られることであり、大きな問題である。
 さらに、学力テストを実施する際に質問紙調査法が採り入れられ、子どもの生活習慣なども調査する所が増えている。本来なら、どのような要因がどの程度学力に影響を及ぼしているかを分析することが目的で、それは、多面的に問題を捉えるために行われるはず。しかし、朝食をとるかとらないかというような一部の要因だけがクローズアップされる。それは、問題を一面的な捉え方しかできていないということを示している。
 朝食をとる子ととらない子とで学力差があるという捉え方は一面的なものであり、それだけに注目するのは間違いだ。