言うは易し 現実は苦し

親の関心、学力伸ばす…小中学生調査

 研究者は「子供の学力を伸ばすにはまず親が関心を示す必要がある」と指摘。子供との触れ合いを保護者に訴える自治体もある。
 先月22、23日、大阪府柏原市で開かれた日本教社会学会。山崎博敏・広島大教授らの研究グループは、子供が一人きりで夕食を食べたり、親が子供の成績に関心を示さなかったりする家庭では、子供の学力が低い傾向があるとする研究結果を発表した。
 山崎教授らは昨年11月、北海道と広島、島根、沖縄各県の小学生1664人、中学生1720人の計3384人を対象に家庭環境に関するアンケートを実施。同時に、漢字の書き取りや計算問題など、国語と算数・数学のテストを行い、家庭環境との関係を調べた。
 その結果、「夕食を一人で食べることがよくある」と答えた小学生(101人)の平均偏差値は44・88で、「一人で食べることはない」と答えた小学生(1056人)の51・19より、約6ポイント低かった。
 「自分の成績を家族がまったく知らない」と答えた小学生(43人)の平均偏差値41・05も、「よく知っている」と答えた小学生1130人の51・00より約10ポイント低かった。
 このほか、学校や友達のことについて保護者とよく話をする小学生の方が、ほとんど話さない小学生より成績が良くなる傾向も見られ、「親子間のコミュニケーションの有無は、子供の学力にも大きく影響している」と結論付けた。

 こういうものを見るたびに、現実離れしているなと思う。それは、

市教委では、「家族の宿題」が学力面に効果を及ぼしていると、手応えを感じており、「家庭で当たり前のことを当たり前に実行することが、子供の学力を伸ばすことにつながる」と、保護者への働きかけをさらに強めていく方針だ。

というところによく現れている。働きかけだけでは、当たり前のことを当たり前に実行することができない現実を変えることはできないからだ。
 子どもの宿題を見てあげる、一緒に食事をとる。多くの親がそうしたいと考えているだろうし、そうしようとやり繰りをしている。しかし、どうしても帰宅が遅くなったり、夜中に働かなければならないということがある。当たり前のことをしてやりたくてもできないことがある。そういう現実を、こういうものを発表する側も働きかけたいという側も前提にはしていない。もし、そういう現実を前提にしているなら、その現実を変えるためにはどうするかというところに視点がいくはずだし、そういう取り組みをするはず。
 朝食を摂らなければ、学力も体力も伸びないよとか。親が宿題を見てあげたり、一緒に食事をとらないと学力が付かないよなどというのは、親は重々承知しているはず。だけど、それをやりましょうよと一方的に言われても、できないんだよと言いたい親が多いのではないか。
 何で朝食を摂らなければとか、宿題を見てあげなければとかそいうところでしか見ないのだろう。その後ろにある問題に何で目を向けないのだろう。この記事に書かれてあるようなものは、何か問題を明らかにしたと考えられているかもしれない。しかし、実際には本当に解決すべき問題の隠蔽に手を貸しているだけではないか。こうですよと言うのは易い、現実を変えることを考えなければ、それは無責任な発言でしかない。