教員免許更新制の必要性はどこにあるのか

【解答乱麻】教育評論家・石井昌浩 教員免許更新制の存続を

 石井氏のこの論文を読んで教員免許更新制がやっぱり必要だねとは全く思わない。石井氏が述べているのは,教師が機会を捉えて学ぶことの重要性であって教員免許更新制の必要性ではないからだ。教師の資質の向上を目指すなら,教師が学べる機会と場を作り出せば済むことで教員免許更新制が無ければそれができないというのは間違っている。
 教員の資質向上という建前をつかって,教師を管理し排除しやすい環境作りに熱心な人にとっては教員免許更新制は残しておきたいものだろうと思う。けれど,そういうものより,教師が学ぶ場と機会を増やすことにもっと力を入れていくべき。
 また,石井氏は全国学力テストについて

来年は、3年前に小学6年生だった生徒が、中学3年生となり調査に参加することになる。3年間の学習の成果を検証するための願ってもない機会なのだ。

と述べている。まず,どうやって比較できるのか。3年間の経年変化を比較するには,問題の難易度など様々な条件を揃えておく必要がある。現行の全国学力テストにそうした仕組みがどれだけ施されているのか。http://benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2005_04/fea_ikeda_01.htmlで池田央氏がアメリカのNAEPについて紹介している。その中で

 トレンドNAEPでは、スペルや四則演算のように、時代の変化にかかわらず不変に求められる基礎学力(スペルや四則演算など)を測定します。9、13、 17歳の生徒に対して、数学、理科、読解、作文(ときに公民)の学力調査が行われ、毎回、同様の問題が使われます。継続的な傾向から学力の変化を探る目的なので、「変化を測定するときには測定尺度を変えてはならない」という原則が守られているのです。測るものさしを変えては統計指標の年次変化の比較はできません。つまり、尋ねる質問は同じものか、少なくとも内容的にも答えやすさの点でも同等のものでなければ、以前の結果と比較して学力が上がったか下がったか判断はできないわけです。

ということを述べている。現行の全国学力テストはNAEPのように緻密に設計されたものではない。点数の上がり下がりだけで経年比較ができるかのような主張は間違っている。